現代においてCADをはじめ、多くのプレゼンソフトが普及しました。これにより、クライアントへの表現の幅が大きく増えました。
これらの表現は建築設計の仕事のしかたを変革した存在であり、その発展が最先端の建築を作り上げることにもつながっています。
今回はそんなCADをはじめとした建築の図面・プレゼン表現等にかかわるソフトウェアについてをとりあげながら、私自身が扱って感じたその特徴などについてを語ってゆければと思います。
CAD
CADとは「Computer Aided Design」の略称です。「コンピュータによる設計支援」という具合に訳せますかね。今ではCADによる作図はあたりまえです。経験年数に関わりなく、まっすぐで均一な線を誰でも引けるようになりました。
私が学生だったころの設計課題は指定されたもの以外はCADを使用していました。
というわけで数多くあるCADソフトの中からこれは使えたほうが作業、そして就職してから仕事がしやすいだろうというものをあげていきたいと思います。
AutoCAD
AUTODESK社が開発するCADソフトです。日本をはじめ、世界トップシェアのCADとして広く使われています。なのでおのずとデータ共有がしやすいということになりますね。
2次元(AutoCAD LT:価格も安価)と3次元の両方に対応し、建築や機械用など各専門の分野に特化した製品もそろえてあります。
使用の感想としては、高機能な作図方法により精度ある作図ができるという印象です。既設、解体、新設を単一図面で調整できる「リノベーション機能」なんかも時代にあっていて素晴らしいです。
ただ反対に多機能かつ高機能なため、設定や画面構成が複雑でわかりにくい部分もあります。またデータの互換性はいいのですが、あと作成したデータ容量が重いので共有しづらい部分もありますかね。
<価格>
209,000円(税込)/年
~サブスクリプション方式で販売されています。この方式は従来あったソフトウェアを買取るのではなく、ソフトを借りて利用した期間に応じた料金を支払うという方式です。
※無料体験版(30日間)をインストールすることも可能です。
※学生や教員は有償版と同じ操作が可能な「学生版」をインストールから3年間無料で利用することができます。
詳しい内容は以下のホームページでご確認してみてください。
https://www.autodesk.co.jp/products/autocad/overview
<対応OS>
Windows/Mac
JWCAD
無料で提供されている2次元作図専用の国産CADです。無料なこともあり、中小企業や個人事務所のシェアも比較的多いです。なのでデータの共有がしやすいですし、DXFデータを扱えるのでAutoCADと互換性もあります。
無料だから機能が低いかというとそうでもなく、2次元図面を描くのに基本的な機能はすべて兼ね備え、精度の高い図面を作成することができます。操作も比較的簡単で覚えやすい印象を受けます。
多くのユーザーが国内にいることから、ネット上でも技術的な情報を得やすいです。
ただしフリーソフトのためサポートがないというのが難点ですかね。他の有料ソフトのように「新しいOSなどが登場した場合、すぐにそのOSに合わせたバージョンが用意される」ことは保証されない点があります(2019年12月現在もJw-cadはバージョンの更新が続けられていますが)。
※クロックメニュー
Jw-cad 特有のコマンド操作で、左右ドラッグされた位置をクロックメニューの中心として、マウスをクロックメニューの真上に移動するとAM12、マウスをクロックメニューの中心から時間の方向にドラッグ移動することで各12コマンドが実行できます。
<価格>
無料
下記のホームページでダウンロードができます
http://www.jwcad.net/
<対応OS>
Windows/Mac※
※Jw-cad自体はWindows専用のCADソフトですが、ネット上には有志による無料のCADソフト「JW-CAD for Mac」が存在します。
Vectorworks
エーアンドエー株式会社のCADソフトです。アトリエ系設計事務所やデザイン事務所でよく使われていることが多いですね。直感的な操作がCADの中でおもちゃ感が一番あって使っていて楽しいソフトでした。2次元の他には3次元機能なども搭載されています。
私は設計事務所勤務時代、VectorworksをMacを使用していたのですが、相性が良かったです。コンペのときもこのソフト1本で平面図から3Dパース、提案書まで作成できるので、さくっとソフト上でレイアウトもしやすかったです。
難点としては、使っていてたまに線を引くときに点情報がずれてしまうことですね。あと3DのCGレンダリングにはもかなり時間がかかります(以前よりは進化していますが)。スペックが良いパソコンでないと作業効率が悪いです。あと他のCADソフトとの互換性が低いので、データの共有に手間がかかるのが実務的には難点ですね。
<価格>
Vectorworks Designer 2019:550,000円(税込)~あらゆる分野のデザインワークに適したもの
Vectorworks Architect 2019: 434,500円(税込)~BIM機能を搭載し建築設計に特化
Vectorworks Landmark 2019:434,500円(税込)~都市計画や造園設計に特化
※上記はスタンドアロン版の価格です。
※学生単価版もあり、上記製品よりも安価で販売されています。
詳しい内容は以下のホームページでご確認してみてください。
https://www.aanda.co.jp/
<対応OS>
Windows/Mac
ARCHITREND ZERO
福井コンピュータアーキテクト株式会社が提供する3D CADです。住宅建築CADの中でシェアの大きいソフトの1つで、私の知り合いで住宅系の設計事務所はこれを導入しているところがけっこう多いです。
2D図面データからすばやく3Dモデルを作成し、設計業務に必要な図面作成や書類、建築CGパースなどを一貫して作成できます。
CGパースのプレゼンテーションは内観や外観だけでなく、ウォークスルーしながらシミュレーションできる「ARCHITREND リアルウォーカー」や、CAD作成したモデルをVRで体験できる「ARCHITREND VR」などがあります。
その他、実施設計から確認申請、構造設計や省エネ計算なども可能で、効率的な設計作業を可能としています。
<価格>
ARCHITREND ZERO 基本:800,000円(税別)
ARCHITREND ZERO プレゼンセレクト:1,200,000円(税別)
ARCHITREND ZERO 実施申請セレクト:1,700,000円(税別)
※保守パックによる年間費用もかかります
※無料体験版 (30日間)あり
詳しい内容は以下のホームページでご確認してみてください。
https://archi.fukuicompu.co.jp/
<動作環境>
Windows
Adobeのグラフィックソフト
Adobe製品は世界中でプロのデザイナーやクリエイターたちが利用している高性能・高品質のツールです。
Adobeソフトは幅広く使われていますので、その知識やスキルを深めることで、よりクリエイティブな仕事の質を高めスピードを早めることにも繋がり、その業種での活躍範囲も広がるでしょう。
以下のツールが建築のプレゼンテーションではよく使われることが多いです。
Adobe Photoshop CC
写真メインの画像加工編集ソフトです。画像の色調や画質の修正できるほか、切り抜きや合成などの編集作業はこのソフトひとつでほとんど可能です。その他イラストやデザインも可能です。
また写真の整理、編集、現像、公開までサポートし、Photoshopよりもさらに写真を簡単に美しく編集できるAdobe Lightroom CCというソフトもあり、併用するとよりハイレベルな編集作業ができるでしょう。
Adobe Illustrator CC
グラフィック、イラスト、ロゴ、アイコン作成など、様々なデザイン作業を行うための描画ソフトです。
複雑なイラストレーションを作成できる業界標準のグラフィックアプリケーションと言ってよいでしょう。
★PhotoshopとIllustratorの違いや扱い方のアドバイス
まず基本的にはPhotoshopは「画像編集用ソフト」です。一方Illustratorは「図形描画ソフト」です。大きな違いはPhotoshopがビットマップ画像、Illustratorはベクター画像をあつかうことでしょう。
ビットマップ画像は、ドットの小さい四角形の集合によって表現されます。一方ベクター画像は、点や線による方程式で表現されます。ビットマップ画像と違い、拡大しても粗くならず、大きく引き伸ばしても大丈夫なデータを作成することが可能です。
なのでPhotoshopとIllustratorは、それぞれの特徴を活かして使用してみてください。たとえば建築だとプレゼンテーションにおいてはPhotoshopでパース画像や模型写真を加工し、Illustratorでレイアウト作成することが多いですね。
InDesign CC
DTP(Desktop publishing:卓上出版)のためのソフトです。出版物に留まらずWeb制作まで活用範囲が広く、さまざまなページサイズやデバイス向けのレイアウトを調整することができます。
Illustratorでもレイアウトできますが、ページをまたいでの編集などはInDesignのほうが格段に効率的よく作業することができます。ポートフォリオ作成などはこちらのほうがまとめやすい印象がありました。
その他、Adobe Premiere PRO、Adobe After Effectsなどの映像編集ソフトやWebサイトのコーディングや編集に用いられるAdobe Dreamweaver CC。Adobe Photoshop MixやAdobe Illustrator Draw などのモバイルツール製品もありますが、それはまた別の機会にご紹介できればと思います。
<価格>
コンプリートプラン:5,680円/月(税別)
~メインのソフトと補助ソフト、モバイル向けのアプリも含め30種類の製品を利用することができます。
※現在Adobeはクラウドサービスをサブスクリプション方式で提供しています(Adobe Creative Cloud)。各ソフト単体ごとでも契約することで月額利用することができます。
※学生割引のプラン(アカデミックパック)も提供されていますので、学生や教職員はそれらを利用することもできます。
詳しい内容は以下のホームページでご確認してみてください。
https://www.adobe.com/jp/
<対応OS>
Windows/Mac
その他の3DCGソフト
上記以外では建築CGパースを表現するソフトとして以下のものがあります。実際私自身が使用してよかったなと思うものを3つ厳選しました。
Shade
高いレンダリング品質と工業製品などのモデリングに適したスプラインベース機能のある3DCGソフトです。工業デザイナーや建築、インテリアデザイナーに人気が高いプレゼンテーションツールとして使用されています。
Shade はスプライン形式のモデラーで、ベジェ曲線を使うものとなっています。ベジェ曲線を扱うAdobe Illustratorの操作に慣れた人は直感的に操作する事ができると思います。まったくはじめての方はモデリング習得にけっこう時間がかかるかと思います。
<価格>
Shade3Dstandard ver20:24,000円(税別)
※サブスクリプション方式による販売で契約期間は1年間です。上記は1年目の価格で、2年目からの更新料は24,000円(税別)になります。
詳しい内容は以下のホームページでご確認してみてください。
https://shade3d.jp/
<対応OS>
Windows/Mac
FormZ
建築や設計シミュレーション重視の3DCGソフトです。数値入力による正確なモデリングが可能でかつ豊富な3Dモデリング機能をもっています。建築や設計シミュレーション重視の3DCGソフトはほかにも多数ありますが、form-Zはその中でも最も高性能であるといえるでしょう。
<価格>
formZ Pro 8.5 RenderZone:275,000円(税込)
※上記はライセンス1つの場合の価格です
※Free版も公開されています
詳しい内容は以下のホームページでご確認してみてください。
https://ultimategraphics.co.jp/
<対応OS>
Windows/Mac
Sketchup
Trimble社によって開発された3DCADで、個人利用であれば無料で使えます。入門用3DCGソフトとして適していますね。企業利用の場合はSketchUP Proという有料版があり、アニメーション機能などが利用でき、VR技術を活用したモデル表示機能もあります。
このソフトの魅力は直感的操作で3Dモデルを簡単に作れるのがいいですね!線と形を描き、マウスのドラッグ操作で引き延ばすだけで平面から3Dにできます。ソフトには拡張機能(プラグイン)が用意されており、自分でカスタマイズすることができるのも魅力です。
またCADデータはクラウド上で保存されるため、大容量データをデスクトップに抱える必要がないのがとても便利ですね。
<価格>
SketchUp Proサブスクリプション 44,000円(税抜)
※無料試用版あり
詳しい内容は以下のホームページでご確認してみてください。
https://www.alphacox.com/
<動作環境>
Windows/Mac
まとめ
とまあ、ざっと今回あげたくらい知っていると作業で困ることはないのではないかなと思います。
これらのソフトを使いこなすポイントとしては自分自身でとにかくいじって覚えるが一番の近道です。経験上、一課題をとおして使用してみるとだいぶ身につきます。そのなかでできる人にアドバイスをもらったりするとより効率的に覚えることができます。
ちなみに参考書はあまり役に立ちません。今の時代ですとキーワードを検索するとブログサイトで教えてくれますし、これからだと5Gになって動画もさくさく見れるようにどんどんなってきますのでyoutubeなどの動画による説明もより充実してくるはずです。
サービスに関して言うならば、全体としては今後AutodeskやAdobeなどのようなサブスクリプションシステムになっていく流れになってゆくはずです。ユーザー的にも月額のほうが見た目負担がないように見えて楽に感じますよね。ソフトをダウンロードしてインストールする時代は5Gになっていくとともに古いシステムになっていくのでしょうね。ひとつのクラウドをユーザーが共有できて自由に使える時代。とても魅力的ですね!
※ブログに掲載したソフトに関する価格は2020年1月8日現在のものを各社ホームページなどを参考にして記載しております。