建築学生へのアドバイス

ルイス・カーンの建築を学生は見よ!おすすめ6作品を紹介

建築を学んでいる学生のみなさんには多くの質の良い建築に触れていただきたいというのが私のおもいです。しかし、最初のうちはどんな建築、または建築家の作品をみていいかわからない人もいらっしゃるでしょう。

たしかに、近代建築の三巨匠、ル・コルビュジェミース・ファン・デル・ローエフランク・ロイド・ライトはおさえておくところなのではありますが、彼らの建築作品で建築を好きになってくれるのかどうかと考えると少し私は疑問がある部分もあります。

なぜなら彼らの作品を見ているとお勉強感がどこか強いんですよね。これは彼らの作品が教科書によく登場してくるせいなのだと思います。もちろん彼らの作品は素晴らしいですし、建築史においての重要性もはかりしれません。

パウレタ(一級建築士)
でもなあ

というのが私の意見。そこで、彼ら以外の建築家で私が特に好きな建築家とその作品をこれから紹介していきたいなと考えています。

前置きが長くなりましたが、今回はルイス・カーンの建築作品を6作品厳選してご紹介していきたいと思います。

フィッシャー邸

アメリカ、フィラデルフィアの中心街から北へ行った住宅地にあるこの住宅は、カーンの住まいに対する空間理念が直裁にあらわれている建築作品となっています。

建築は、リビングダイニングのあるキューブと個室のあるキューブそれぞれ2つの箱型建築が斜め45度に振られ、重なり合って配置されています。木板で覆われた外壁による美しい幾何学形態が林を背景に佇んでいます。

キューブの傾きは住宅の各々の部屋ごとに適した光や風景が取り込むために意図されたものです。キューブ同士が重なりあう結節点にはエントランスホールがあり、それぞれを介在する役割をなしています。玄関扉を開けたエントランスからは林に向けて視線が抜けるように大きな開口がとられています。

住宅の中心となるリビングダイニングには、開口部と一体に設計された造作椅子があり、部屋から庭への広がりをよりもたらしています。2層分あるリビングを突き抜けるように置かれた安山岩の暖炉は、規律正しいカーンによる空間でよりフォーカスされ、大黒柱のようにどっしりと構えています。

箱型の建築をシンプルに45度空間を振ることで内部に豊かな関係性や奥行きを生み、人間の居場所をつくりあげています。

エシェリック邸

フィラデルフィア郊外にあるこの住宅は、書店経営者であるクライアントのために様々な工夫がなされた建築作品となっています。

敷地に入って見えてくる外観は、地面から暖炉の幾何学的な煙突が立ち上がり、シンメトリーに壁を分割しています。窓も見えず、そのたたずまいは抽象彫刻のような印象を受けます。

平面計画はリビング、ダイニング、寝室がある部分と、階段、水廻り等のサービス部分が交互に配置されています。

2層吹き抜けのあるリビングは、壁面に大きな書棚が造作され、上部は横長の嵌め殺し窓によって空に開いています。北側からの穏やかな光が白い天井面に反射し、読書に最適な空間をつくりあげています。中央の配置された縦長状の板窓は道路側に対してのプライバシーを確保しながらも通風をとるための開閉窓となっています。カーンはガラス窓を静的な透明壁、板窓は動的な変容壁として設計したわけです。リビングにも同様に外の風景をながめるための大きな嵌め殺しガラス窓、両脇には通風のための板窓があり、各々眺望と通風の働きを担っています。

決して派手さのまったくないシンプルな住宅ですが、シンプルで明快な外観意匠が内部空間に展開されて豊かな居場所をつくりあげ、見れば見るほど奥深さを感じる建築作品です。

ソーク生物学研究所

アメリカ西海岸の最南端、サンディエゴの大海原を望む場所にある研究施設です。ここはポリオ・ワクチンを開発したことで知られるソーク博士によって創設され、多くのノーベル賞者を輩出している世界的権威の研究所です。

建築は海と空が対峙した広場、そしてコンクリート打ち放しの建築造形と絶妙な組み合わされたチーク材の開口部がとても印象的です。広場をはさんで配置されている2つの実験棟はシンメトリーに並列され、壁柱のリズムがとても美しくまるで神殿のようです。研究室以外はほぼ外部に面して通路または吹き抜けがあり、地下にあるスクエアガーデンの緑は無機質なコンクリートによる空間にやわらぎを与えています。海に面した壁の一部には チーク材のパネルがはめ込まれ、冷たい印象のコンクリートのなかにあたたかな表情をつくっています。

そして実験棟をはさんだ広場!大理石がとても美しく、その場の時が止まっているかのようです。そんな静寂に満ちた広場をカーンの友人でありメキシコの国民的建築家ルイス・バラガンが「空へのファサード」と評したのもうなずけます。余計なものが何ひとつない広場の真ん中から海へと真っすぐつながっていくように存在する水路。夕日がその先に落ちる様子はもはや感動を超越した建築風景です!

バングラデッシュ国会議事堂

古くからあるイスラム伝統建築を彷彿とさせたこの建築は、時空を超越した圧倒的な存在感で、威風堂々という言葉がぴったりではないでしょうか。湖に浮いているかのような建築風景は、敷地が洪水の多い場所であることから建物を盛土した上に配置し、その土を掘った跡をうまく活かしたものとなっているそうです。

建築は、立法府と行政府の各々が南北に対峙した配置となっています。これら2つが都市の軸に沿い、議事堂からなる秩序に重ねあわされた配置計画となっています。そして中心には十六角形の議場があります。そこを高さのそろった正方形、円形による塔で囲み、さらに大きな正方形に内接して配置されています。

アプローチ側の基壇広場の前には開口のなう議事堂の正面壁が立ち上がり正面、他の外壁には幾何学的な大きな開口が開けられています。4つの円筒建築に囲まれたモスクだけが都市の軸から外れ、メッカの方角に建物の軸を合わせた独立した存在を示しています。

建物はパキスタン政府に依頼を受けてから東パキスタンの独立、バングラデッシュ建国などにより、完成まで20年もの歳月を要しました。カーンは完成した建物を見るなく亡くなってしまいましたが、モダニズムでありながら風土に根ざした彼の建築は国の文化と誇りの象徴となっています。

キンベル美術館

この美術館はテキサス州のフォートワースにあるカーンの最高傑作と言っても過言ではない建築作品です。1972年完成した当時、保護のため美術品にはできるかぎり自然光に当たらぬよう配慮された美術館が数多い中、ここではトップライトから降り注ぐ光の中で作品を鑑賞することができました。

建物自体の骨格は、サイクロイド曲線によるヴォールト形状屋根による長いボリュームが16個並び、前庭をとりかこみながら配置されています。これらの用途は、展示室やオーディトリアム、または図書館などからなり、そのうちの2個は館内へのアプローチを担っています。力強い形式的な建物形状から展開されるアプローチと、そこからふと垣間見える自然要素がとても美しいです。屋根下にあるポルティコに入ると、水庭に日が反射し、天井が光でゆらめいていました。

内部へ入るとヴォールト形状となっている屋根中央に細長い開口がもうけられていて、そこから自然光を採り入れています。これによって上部からの自然光は、開口下に湾曲して設置された反射器具によって、柔らかな拡散光にコントロールされます。館内を歩んでいくと、展示スペース、カフェ、オーディトリウム、そして光庭と空間が展開されます。その空間自体に存在するありとあらゆる光が時間とともに変化してゆくのを感じることができます。この建築は光という自然要素を空間として表現しているかのようです。

イェール大学英国美術研究センター

イギリス中世から近代にかけての絵画の展示されたこの建築作品は、カーンの遺作といわれています。イェール大学の歴史的な建物群の中に佇む外観は、コンクリートによる構造フレームに金属パネルとガラスが嵌めこまれたシンプルで静謐な表情をしています。

館内に入ると、5層ある建物を貫く吹き抜けが来館者を待ち構えているように存在します。日中はトップライトからの自然光のみで作品を鑑賞できるように設計されています。美術館と思えないほど光に満たされた空間のなかで、コンクリート打ち放しの構造体と木の仕上げは互いの素材感を引き立て合っており、その関係性が視覚的にも非常に美しいです。

吹き抜け中央にある円筒は階段室となっていて、内部はガラスブロックによるトップライトを透して光が注がれます。2階3階の空間は天井が低く抑えられ薄暗く圧迫感を感じますが、内部開口からの吹き抜けによる光が空間の抑揚をつくっています。 最上階へ上がると天窓からは光が溢れ、天井の高い展示空間を開放的に見せています。

資料室に木製造作された机や椅子、そして書棚などは、カーンによって意匠が施されています。光あふれる木質のあたたかな空間は住宅のようなここちよさがあり、公共的な空間の中に人のための居心地の良い場所をつくりあげています。カーンの規律正しい構成と厳密な精度と空間本来がもたなければいけない心地よさが同時に存在するすばらしい建築作品です。

まとめ:カーンの建築に対する姿勢を空間で感じよ!

私が厳選してご紹介させていただきましたルイス・カーンの建築作品の数々いかがでしたでしょうか?建築を設計するという行為に対して真摯に向き合っているのが作品をとおして伝わります。私自身も最初からこの建築家を敬愛していたわけではなかったのですが、ふとあるごとに彼の作品集をながめていくうちに、カーンによる建築の初源を追求した奥深さに惹かれてゆきました。時代に流されない彼自身のもつ建築に対する信念には、建築作品そのものから説得力を感じます

参考文献:Louis Kahn Houses、a+u 2009年2月号、GA76 エシェリック邸、a+u ルイス・カーン

-建築学生へのアドバイス

Copyright© パウレタの建築設計仕事とその周辺 , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.