建築の大学に入って勉強していくと、
「自分はこれから建築の設計もしくは建築に関する仕事をしていくうえで、会社に就職してそのままずっと企業のプレイヤーとして働いていくのか、それともある程度経験をつんで建築士の資格を取得して建築設計事務所を設立、つまりは独立して仕事をやっていくのか?」
という漠然とした悩みを誰しもが持ち始めるのではないでしょうか?
ということで、今回はいくつかの設計事務所や会社で勤務経験もあり、さらに現在では一級建築士事務所をかまえている私がそれぞれの良さ悪さなどを書いていこうと思います。
独立し建築設計事務所を営みながら設計をしてゆく
時間を自由にあつかえる
まずはこれが一番大きい!私は時間をお金が買ったといってもいいかもしれません。これがあるから多少収入が少なくなったときでも頑張れるのかもしれません。自分に合わせた時間帯で仕事ができる。または休みをとることができるのはかなりのストレス軽減になっています。
私は結婚して子供もいるのですが、やはり家族ができてからはこの時間を自分でコントロールできることの楽さは助かっています。妻も働いているため、子供に何かあったときは基本最初は自営業である私が対応することになっています。
これが家庭がうまくいっている要因にもなっているんですよね。
管理建築士の資格を取得できるまで
建築士の資格をとって実務経験3年をしてからでないと管理建築士の資格はとれません。
でも今思えばなんですけど、一級建築士の資格をとってからの仕事はなかなか充実したものでした。やはり資格をもっているし、だいぶ技術も身についたせいなのでしょうね。良い仕事を任される機会が資格なしのときよりも増えて、それが自信にもつながった期間でした。なので独立志望の人はこの建築士を取得して管理建築士の資格が取得できるまでの3年間はしっかりと仕事にうちこめる環境を選択してほしいなと思います。
仕事獲得が大変!
やはり独立して一番大変なのは仕事を獲得することですよね。
様々な営業をして模索しながら日々をおくっております。運よく仕事にめぐまれた時期もあれば、からっきしのときもありました。なので独立をするなら勢いではなくて、ある程度の仕事獲得の目処がないと大変になります。
でも仕事が獲得できたうれしさは半端ないですよ!自分の仕事が認められた、自分には稼ぐ力があるんだという自信になります。
収入が不安定
上記の仕事獲得に関連して収入は不安定です。もし安定が最優先なのであれば独立はやめたほうがいいです。しかし、建築設計だけにこだわらず、拾える仕事をやるというスタンスを自分の中でもってしまうと、比較的安定な収入部分も確保できるのではないかと私は考えます。
ただし、仕事はほとんど下請けのような仕事になります。それを確保するのに躍起になってしまい、肝心の設計仕事をおろそかにしてしまうと何のために建築設計事務所を自分で立ち上げてやっているのかわからなくなってしまいます。そこは注意しておかなくてはいけない部分ですね。
独立して必要に感じたこと
仕事の獲得のしかたをある程度見越して、さらにそれを確立しておかないといけませんね。コンスタントに設計仕事をつくる道筋をたてておかないと空白期間ができてしまうわけです。それを埋めようとするのはなかなか大変ですし、下手をすると廃業という選択をとらざるえおえない状況までにいってしまいます。
このバランスを自分の中で見極めることが大事です。あとは金銭的にいただける建築仕事であれば、何でもやってみることも大切かなと感じます。そこから実際の設計の仕事につながることも多かったですね!
会社員として設計をしてゆく
収入の安定
まず会社員であるということのメリットはここが一番大きい部分でしょうね。設計の図面を描いて検討して、それで毎月お金が入ってくる。「今考えるとなんてあのときは楽であったんだ」と思ったりもします。日々を送っているだけで通帳にお金がたまるということはこんなに安心感があったのか、と。お金があるという安心感が雇われているということと引き換えに保証されているということの安定感はやはり大きいです。
設計の仕事に専念できる(若いうち限定?)
これは若いうちなのかもしれませんが、設計の仕事に集中できる環境にあるということですかね。税務申告や事務所運営、または営業にまで気を配ってやっていかなくてはいけないということを考えると、設計だけできるというのはありがたい部分です。
とにかく設計をこなす機会が与えてもらえるのでそこでいかに技術や経験を積み重ねていけるかが大事になってきます。これは独立を将来考えている人ならいる期間を自分である程度設定しているはずなので、よりがつがつ積極的にいけるかと思います。けっきょく同じようにやっていかないと下からの台頭に焦りを感じてしまうことになりますので頑張らなければなりませんね。
将来会社でどういうポジションを獲得していくか
やはり会社員として企業の一人としてどういう立場になっていくのか、というのはよく考えなければいけませんよね。
より大きな組織の一員となるのであれば、上司や部下という関係もでてきます。いつまでも新人ではないので下も育てていかなければならないし、年を重ねていけば、より会社を運営する立場に近い考えで行動していかないといけなくなるかもしれません。それは個人事務所の所長というポジションなんかより大きい責任があるものになります。そこにやりがいを持つことができれば充実していくでしょう。
まとめ:独立と会社員どちらがいいのか?
さて、それぞれ私の経験をふまえてお話させていただきましたが、これだけではなかなか決めきれないというのが読者の方の感想でしょう。
でも私なりにまとめとしてヒントを以下あげてみますね。ここでは適性や環境、仕事の生み出し方という3つのポイントにしぼりこんでみましょう!
設計という仕事のスタイルを確立できているか
ここで言いたいことは自分がどんな仕事環境を求めているかを考えてみて欲しいということです。自分個人の考えを設計で表現していきたいのであれば独立してやるべきでしょうし。周りの人と協力しながら設計を表現して成果を出したいのであれば組織の一員としてやっていくべきでしょう。自分のスタイルに沿った働き方に対する選択を考えてほしいですね。
時間をコントロールできているか
たとえば今現在会社員で、ある程度自分の時間をコントロールできて良い環境であると感じているのであれば、あなたはそこでこれからも頑張っていくべきなのではないかと私は考えます。
私は自分の時間や仕事をコントロールできる環境を求めて設計事務所を立ち上げて自分でやっています。つまり以前働いていた会社ではそれがまったくコントロールできない環境であったからです。これは仕事に対するモチベーションを著しく低下させました。これから仕事やプライベートを生活にどう関係させていくかというライフスタイルの設計も考えてほしいですね。
仕事を獲得するための行動ができるか
仕事を獲得すること、つまりは営業になっていくのですが、ここにまだ苦痛や苦手意識を感じてしまううちは独立してやるべきではないですね。でも今の時代、名刺などをもって会社などを訪問するだけが営業ではありません。SNSなどネットを活用したりなど、様々なアイデアをもってクライアントと出会う手段を模索するのはけっこう楽しい部分もありますよ。
でもこれは意外と慣れや積み重ねで克服できることを知り、いろいろな人と交流するようにしています。会社にい続けるとこういう役割も徐々に必要にはなってくると思います。会社にいても仕事などをとおして外に動ける環境をひろげていく努力は心がけてください。
いかがでしょうか。上記のことからまずは自分が独立か会社員、どちらが仕事をしやすいかというのを捉えなおしてみてください。この3つのことを読んでいてピンと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、実はこれら、けっきょく独立していても会社員でも必要になってくるものなんですよね。それをどの環境でつくることができるかを自分が決めることなんです!
自分の将来を考えるのは不安もつきまといますが、ある程度考えながら行動にうつしていくことで、また自分がおもってもない道筋と出会い、それが人生を方向づけてくれる可能性がひろがります。建物の考え方が時代背景に左右されるように建築に携わる私たちもその時代に翻弄される場合も多いです。そこを自分でうまく舵取りできるため、どんどん考え行動しながら社会と自分との距離感を調整していきましょう!