建築を勉強する学生、そして建築を仕事にしながら日々勉強している実務者にとっても建築作品の事例が掲載されている建築雑誌は必需品です。そこでは建築作品をとおして社会背景や建築業界がどのように動いているかを知ることができます。
ただぺらぺらとめくってながめて楽しむのもいいですが、建築雑誌といえども専門書のひとつ。建築を学ぶのであれば、しっかりとした切り口をもって見ることで、自身の蓄積となってゆきます。
ということで今回は、建築雑誌を活用した建築設計の勉強方法をご紹介してゆけたらと思います。
建築雑誌は図書館で見よ!という時代ではない。。
建築設計事務所や大学の研究室の本棚には、建築雑誌がところ狭しと並べられています。自分もあんなふうに買い集めることができたらなと学生当時は思ったりしましたが、お金がありません。住んでいた当時の家も狭く、置く場所もそうそうありません。購入できる建築雑誌にも限りがあります。
ではどうすればいいのか、図書館を利用するしかありません。図書館にはごっそりと雑誌のバックナンバーがあります。そこからいろいろ引っ張り出しては読んでみましょう。
と、これまではアドバイスしてきましたが、今はもうそんな時代ではありません。
最近ではコロナ渦の影響もあり、建築作品のデータをネットで公開し、一部無料で閲覧できるようにしている出版社もあったりします。
おもな建築雑誌の紹介!
まずはどんな建築雑誌があるのかという学生の方もいらっしゃると思いますので、ここはおさえておいたほうがいいという建築雑誌を以下あげてみます。もちろん今回あげた以外にも多くのすばらしいメディアがありますが、メジャーどころに目をとおすだけでもおなかいっぱいになるはずです。
新建築
まずは日本の建築メディアを長年を発信してきた新建築。今も昔も新しい建築作品はこのメディアから発信されてきました。建築家として名前をあげたい設計者なんかはこのメディアに掲載されるのをまず目標とする人も多いです。
新建築住宅特集
こちらは新建築から住宅に特化した作品を掲載している雑誌です。私は住宅に興味があり、住宅専門の設計事務所に勤務していた時期もありましたので、この雑誌に掲載された作品から多く勉強をさせてもらいました。
au
こちらも新建築社が出版している海外の建築を紹介している雑誌です。日本とは異なる感性でつくりだされる建築はとても刺激になりますね。
GA
こちらも新建築のように建築作品を発信している雑誌です。雑誌にも作品性があるといわんばかりの個性があり、それが日本の建築メディアを押し上げる原動力にもなりました。こちらの雑誌も日本の建築を特集したGAJAPANや家を特集したGAHOUSE、そして海外作品をおもにとりあげたGADOCUMENTなどがあります。
住宅建築
こちらは建築資料研究社が編集しているその名のごとく住宅建築を掲載している雑誌です。こちらは上記の雑誌と比べ、実務者好み、玄人好みの住宅を選別している印象を受けますね。学生のころはあまり見ていなかったのですが、住宅の仕事を行うようになってからよく目をとおすようになりました。
日経アーキテクチュア
こちらは建築業界に関する情報をおもにとりあげた雑誌です。業界の情報を最先端から切り込んでいる内容は勉強になり、働き始めてからはよく目を通しています。こちらは店舗で販売されておらず、購読契約をする必要があります。
建築雑誌の何を見るのか?
さて、いろんな建築雑誌があるなかで、まず何を見て勉強すればいいのか、という切り口が大事です。今回のブログでは建築設計という視点から私がどういう切り口で雑誌を活用してきたかの例をあげてみます。
建築作品を見る!
作品をファイリング!
雑誌から興味をもった作品をコピーしてファイリングしてみましょう。最初は直観的なものでもいいです。とにかく、たくさんみて収集しましょう。ここのいいところは自分が気になった作品のみがそこに集約されていくことです。やはり勉強するのであれば自分の趣味にあったものや気になったものなどから入るのが一番です。
分類化
収集したものに目をとおすうちに、自分の中で分類ができてくるはずです。それは外観であったり、プランであるかもしれません。それらの分類を自分のなかで整理していくと、また新たな建築作品と出会ったときに、「ああ、これはこのタイプね」と自分の中での建築作品における目が養ってきます。
たとえば住宅など用途をそろえて整理してみるとそれがよりわかりやすくなってくるはずです。私の場合はまず住宅作品にしぼってこの作業を行って勉強しました。住宅ひとつとっても様々なパターンがあることに気づかされました。
または時系列に並べてみても面白いですね。この分類では建築がどう変革していったかを作品を通じて見てとることができるはずです。
作品写真、図面、テキストとの関係
建築作品の外観や内観などの建築写真、設計図面、設計者が作品説明を行うテキストに目をとおしてほしいです。これらをワンセットでながめることでその建築がどのようなバランスをもって成り立っているかを知ることは建築をつくるうえで重要です。
プランを読み込め
素晴らしい建築ほどプランが良く考えられ練られています。また建築家の作品によってプランの癖みたいなものもあります。この人はこのアプローチ、とか、部屋のつなぎかたが同じパターンだ、とか、そういうことがわかってきます。人がつくる建築プランはその人のロジックが線となっています。プランにもいろんなパターンがあるわけです。プランニングが上手になるにはその引き出すを増やす必要があり、そのためには多くのパターンを知り、整理しておく必要があります。
雑誌全体を見る!~直近一年間の雑誌から時代を探れ!~
建築雑誌は作品をただ見るというだけでなく、そこからその時代背景をよみとることができます。ある優秀な先輩は「自分は1年間分の新建築を読み込めば、最近の建築界に何が求められているかがわかる」といっていました。このアドバイスを私も実践してみると、これがけっこう効果的で、コンペに入賞できるきっかけのひとつになった実感があります。
もちろん、普段の日常生活にアンテナをはることによる気づきも大切です。でもそれが、現在の建築の流れにおいてどうなのかを確認するうえでは、建築雑誌はとても適した媒体だと思います。
まとめ:建築情報がデジタル化、AI化される時代へ!
いかがでしたでしょうか?
建築設計を志す人にとって、建築作品が集積されている雑誌は、時代や自分をみつめなおすとても重要なツールであり続けることでしょう。
今後は出版業界も変革をとげ、雑誌として扱っていた情報もデジタル化があたりまえになり、情報が簡単に手に入り、そしてカスタマイズしやすくなっていくことでしょう。自分にとって有益なものを集め、そして自分の中で整理していくのか。そこもうまく考えていくと、自分の建築に対するビジョンがよりひろがっていくことになるかと思います。
そしてさらに上記で私がみなさんにおすすめした勉強もAIがさくっとしてくれる時代になりつつあるでしょう。