建築学生へアドバイス

建築学生はレム・コールハース/OMA作品を見よ!厳選7作品を紹介

今回はオランダ出身の世界的建築家レム・コールハース/OMAの作品の魅力についてを語っていきたいと思います。彼が提案する建築作品の数々は建築を志す多くの学生に刺激を与えてきました。日本の建築家特に40代あたりの世代はもろに影響を受けているはずです。
そんな彼による建築作品の大きな魅力は、まず空間構成力にあります。その具体的な構成手法としては、建築の中に生まれる地形的な空間との組み合わせによる部分が大きいです。工業製品などに用いられる安価な材料を効果的に活用したダイナミックなインテリアデザインもまた魅力ですね。そしてそれらを裏付ける建築の考え方が絶妙な言葉のチョイスで語られるわけです。これは彼が建築家をやる以前に記者や脚本家という経歴があるからもあるのでしょう。個性ある言い回しが非常に魅力的です。
それでは私の個人的な彼の作品セレクションとともにその魅力をよりくわしくご紹介したいと思います!

エデュカトリアム


まず最初にご紹介したいのが初期の代表作であるこちら!レム・コールハース/OMAがマスタープランを手がけたユトレヒト大学キャンパスの中にある建物です。ちなみに「エデュカトリウム」とは、「Education(教育)」と「torium(工場)」を掛け合わせた造語です。
この建築は床や壁、天井という要素をを再構築した空間構成が革新的です。どういうことかといいますと、1枚のスラブが空間用途やプログラムに対して、床、壁、天井として変化し空間を構成しています。これによって部屋と通路が一体となったひとつながりの空間が生まれています。
たとえばエントランスを入ると、水平なスラブとスロープで斜めになるスラブが現れます。スラブに沿って設置された階段が隣の講義室もスラブに沿って傾斜し、それが機能として最適化されています。また地上階にあるカフェテリアは、スロープから続く斜めスラブが天井の高さに変化を与え、外部に意識が向くような設計となっています。
ガラスのカーテンウォールによってそれらの構成が外観からも明快に見てとれるのも特徴的です。
まるで建築の中に地形が存在するかのような表現。これらにはレム・コールハース が生まれ育ったオランダの風土が影響しているのでしょう。オランダは海を干拓してつくられた国で土地はフラットです。だからこそ地形に対するあこがれのようなものがあったのかもしれません。

クンストハル


こちらの作品もコールハースの初期の代表作のひとつで、現代建築のアイコンともいわれています。この建物は企画展専用の美術館であり、古典アートから現代アートまで様々な展覧会を催しています。
この建築の特徴も先程ご紹介したエデュカトリアムと同様、全体をとりまくスロープ空間にあります。建物は平面上ではシンプルな構成ですが、スロープ状の床が視覚的にそれぞれの空間変化を与えています。来館者は傾斜したらせん状のフロアを通り、流れるように7つの展示室に導かれます。斜めの床が階の概念を曖昧し、連続的な空間体験を可能としています。
そのほかに建築材料の使い方もユニークです。従来の美術館によく見られるホワイトキューブ型の展示空間ではなく、グレーチングやポリカーボネートといった、安価で街中でもよく見かける材料が仕上げが使用されています。これらによって、まるで都市の中に美術品が置かれているような感覚を空間で表現しています。

ボルドーの家


フランス、ボルドーの街が見渡せる丘に建つこの家は、車椅子生活となったお施主さんのために、3×3.5メートル四方(およそ6畳くらい)のまるで舞台装置のようなエレベーターで上下階を移動する仕掛けが特徴的です。
建物は異なる役割をもつそれぞれの住宅空間ボリュームが3つ積み重なって空間は構成されています。下階のプライベートな家族空間から上階のパブリックな家族空間の階を貫くように、ステーションと呼ばれる6畳のエレベータースペースが移動します。エレベーターを単なる上下の狭い移動手段でなく、エレベーター自体を「動く部屋」として扱っているところがこの建築の面白いところです。部屋は上下し、各階の床にぴったりはめ込まれたようにとまります。吹き抜け側面は上下すべて本棚となっていて、床を任意の位置で止め、車椅子に座ったままでも本に手が届くようになっています。
建築家はこのエレベーターの移動によって、施主とその家族の生活に変化が起こる状況を空間で表現したのです。

ネクサスワールド


ネクサスワールドは建築家の磯崎新によりプロデュースされ、世界で活躍する建築家6名を集めて競作した集合住宅作品群です。そのなかでもレム・コールハースの建物は異彩を放ったものとなっています。
山並みのようにうねった造形的な表現の屋根で挑戦的なデザインです。道路に面した外壁面は、緩やかに波打っています。2階部分の黒い石垣のような素材からなる重厚感に対し、1階と3階部分はガラスで軽やかにつくられていて、その対比がより建築造形を強く表現しています。
住戸は3層のメゾネットタイプとなっています。垂直方向に光や風をとりこむ中庭が吹抜け、プライバシーを確保しながら上下階のつながりをつくりあげ、各部屋に開放感をもたらしています。
昔の長屋は住戸が一直線に連なるものでしたが、コールハースは前後左右に並ぶ高密度な重層長屋とし、日本の集合住宅文化を現代化したわけです。

在ベルリン・オランダ大使館


こちらの作品は、東西ドイツの統一を機に移転のため建てられたオランダ大使館です。
建物は廊下や階段、スロープなどの動線空間が複雑に機能をからめながら構成され、それらが外からもわかるような意匠となっています。一本の動線が内部を横断しながらところどころでファサードに窓として表出し、周囲の環境と連動しています。外からは会話をしている人やベンチで休憩している人などがうかがえます。人の行為が動線空間にあふれ、コミュニケーションを誘発しているようにも見えます。まるで都市の中を歩くように建物の中を歩くシーンや雰囲気です。

オランダは人口密度が高い国ですので、限られた面積のなかで街の風景を建築として立体的に構成する開放性もありなのではというのをコールハウスは表現したかったのでしょう。

シアトル中央図書館


こちらの作品、ガラスとメッシュ状の鉄から構成された多面体の結晶のようなユニークな形態ですよね。これは図書館施設です!この図書館建築においてコールハースは、これまでの利用状況や将来の蔵書の増加、利用者や管理者の使い方を整理、分析し、施設プログラムを再構築した空間を新しく提案しています。
コールハウスはこの作品で、図書館における「時代の変化に伴って利用の仕方が変わる開放的な空間」、「時代が変わっても利用の仕方は基本的に変わらないものとして固定された空間」からなるプログラムを、垂直方向に交互に積み上げられながら、空間的に関連し合うように構成しています。
デジタル化の進む現代では、図書館の役割もこれからどう変わっていくのか予測がつきません。メディアの形態もどんどん変化してゆくはずです。そういうときが訪れた場合に、想定していた機能が互いに侵し合うのを防ごうという考え方でこの建築はつくられています。

カーサ・ダ・ムジカ


ポルトの歴史的な街並みの中に、この建築は鉱石のような多面体フォルムで佇んでいます。こちらの作品は、ポルトがEU文化首都(2001年)に定められたことを記念して建設された音楽専門のホールとなります。ちなみにカーサ・ダ・ムジカは「音楽ホール」を意味します。
建築の考え方としては、ホールを建築の中心に配置して、そのまわりの空間をくりぬいています。そのくりぬかれた余白空間は、都市つまり外にいる人々に建物を向けた空間として構成されています。そこにはホワイエやレストランなど、施設を補助するプログラムとなっていて、それらが立体的な動線となって回遊できるように配置されています。
コンサートホールの背後からは開口をとおしてポルトの都市が見えます。また動線空間からはホール内部の様子が見えます。空間を徘徊しながらホール内部を散見できる施設って革新的ですよね。
コールハースは、コンサートホールという施設の内側で行われていることをより多くの人たちが知ることのできるため、これまでにない施設の内外を関係づける設計を行ったのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
コールハースの建築は、普通は結び付けないなプログラムを結びつけ、同次元で存在させているという提案が多いです。それらが建築として実現している姿がすばらしく魅力を与えます。彼の建築提案は、かたちだけでない状況をもつくりあげています。
彼がつくりだす一見突飛な形態をした建築は、プログラムの構築を魅力的な造形でロジカルに表現しているのです。そしてそれを裏付ける卓越した語彙からなる力強い言葉によって、これらが現代なんだよということを伝えてきたのです!

参考資料:a+u2004年2月号:a+u OMA、a+u 2005年1月号、GA03 LIBRARY

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