建築実務入門

建築設計でヒアリングは超重要!その方法とポイント

こちらのブログカテゴリーは建築設計の実務に関する入門としていろいろ扱っていこうと考えています。

パウレタ(一級建築士)
特に建築設計を仕事として扱い始めた人たちは必見です!

建築設計という実務は、図面などの技術的なこと法規などの知識的も部分も大事ではあります。しかしそれと同じくらい、いやそれ以上に私は接客など、対人間に関する実務も非常に重要な部分となります。私はこの対人間、その多くはクライアントとなるわけですが、そこに関しても多く取り扱っていきたいと思っています。

そこで今回は建築提案の第一歩となる、クライアントへのヒアリングについて私自身が実際の実務で行っている方法や気をつけているポイントについてをお話ししたいと思います。

パウレタ(一級建築士)
建築に関するこういう情報ってけっこう少ないんですよね

それはどうしても人の経験などが関係してくるので主観的なものになってしまうからだと思います。しかし人の主観的な失敗例や成功例ほど参考になるものはないと私は考えます。それをできるだけ設計実務に携わる方々へ共有できたらなと思い、ブログとして表現してみました!

はじめに:設計提案前におけるヒアリングの重要度

ぶっちゃけ、設計者にとってクライアントから要望を聞き取るヒアリングは実際に設計案をプレゼンするよりも重要であると私は考えます。

パウレタ(一級建築士)
意外とここをおろそかにする人が多いんですよね

しっかりクライアントのニーズを引き出し、それを聞き取って提案に結び付けないと、心をつかみ取ることができません。これは仕事からの経験で感じてきたことです。特に若い設計者は自分の提案でクライアントを喜ばせたいと思う人が多いです。これは設計事務所で働き始めた若かりし自分もそうでした。でも、クライアントはそれを一番には望んでいません。

クライアントは自分たちの要望がきちんと提案に整理して反映された前提で、さらにそこにどんな提案があるのかということを期待しています。なので、その要望を完璧におさえないと、何をしても彼らは気にいってはくれません。彼らが思うことはひとつ「ああ、要望を反映してくれてないんだ」なのです。

自分の提案が受け入れられる、喜んでもらえるようにするにはそのための準備やタイミングも必要なんです。そこをまず頭に入れてこれから私の書いた文章に目をとおしてください。

クライアントが要望や悩みを吐き出せる雰囲気づくり

ヒアリングの時点では、設計者もクライアントも初めて会う、もしくは一度会っただけでまだあまり腰をすえて話ができていない状態であることが多いです。お互いおそらく緊張している部分もあることでしょう。

そこで私たち設計者ができることはあたりまえで基本的なことなのですが、以下上げることを心掛けながらクライアントの心を少しずつ開かせる努力をすることにつきます。

クライアントが気になる要素を消そう

クライアントがあなたの事務所に入ったときに感じるものに関してマイナスになりそうなものは排除してゆきましょう。

オフィスはきちんと片付いてきれいになっているか。

部屋の空気はよどんでいないか。

設計者自身についてもそうです。きちんとした身なりをしているか、アシスタントのスタッフもそうか、とか。ひげや口臭などの自分たちから発する要素にも気を配りましょう。

意外と人は初めて会ったり訪れたりするところほどいろんなところを気にします。それが気にならないようにこころがけるのは人を迎い入れる最低限のマナーでもあるでしょう。

設計者(自分自身)の表情をコントロールしよう

クライアントと会って時間が間もないときは、設計者も緊張しています。もちろん場数を踏んでいくと慣れていくかもしれませんが、私はどちらかというともともと人見知りな部分があったりもしますので、かなり気をつけています。

特に顔の表情に関してはできるだけ客観的に自分がどういう表情になっているかをチェックすることで、コントロールできるように地道に訓練をしました。

どんなことかというとかんたんで、まず表情ができるだけ引きつらないよう、お会いする前に鏡などを見て確認しておきました。

そしてはずかしいですが、鏡のまえで笑顔をつくって発声してみることで、自分の表情と声を客観的にわかるように確認もします。あほらしいと思うかもしれませんが、苦手な方は必ずやっておくべきです。

クライアントとの会話の導入

あらためてお会いするクライアントと設計者。私は自然に会話を行える設計者の人たちがとてもうらやましいです。でも私にはできない。でも建築の設計は好きであるし、続けたい。では努力をするしかありません。

最初、読者のみなさんであればどんな言葉をかけられますか?私のように何を言ったらいいか迷う人もいるかもしれません。私がいろんな経験をしながらこれが一番自然かなと感じているのは、クライアントの目線を確認しながら何を気にされているかを確認し、それにあわせた会話をしていくということをこころがけています

パウレタ(一級建築士)
ある程度誘導してもいいかもしれませんね

たとえばこのあいだ来ていただいたクライアントのかたとの打ち合わせでは、彼らが初めて私の事務所に来ていただきました。私は事務所の内装デザインを自分で手掛けておりますので、はじめて事務所に来ていただいた方にはそこに目がいくように会話をはじめ、お互いの距離感を縮めていくようにしました。

その他にはクライアントの情報がある程度あるのであれば、依頼する建物に近い用途の模型を打ち合わせテーブルの近くにおいておいて、その話をするなど。クライアントは設計の依頼をしようとしているので、それに関する興味の話題に誘導できるような流れをつくっていくように私はしています

パウレタ(一級建築士)
これがなかなか効果的なんですよね!

設計者は聞き手に徹するということが大事

建築づくりの主役はクライアントであります。建築の設計者ではありません。ヒアリングの主旨は彼らが欲していることをすべて話して吐き出してもらうことです。私自身、自分の話はできるだけ最小限としています。

クライアントとしては自分のおもいを話したくてうずうずしています。でも緊張もあってそれが放つことができなかったりもします。設計者はそれらを解き放つ手助けとなるようにして、彼らのストレスを少しでも早く解消してもらうようにこころがけましょう。良い振りを彼らに与えられるかというのが大事ですね。私自身は話すのがそんなに得意ではないので、この振りを一生懸命行うようにしています。

パウレタ(一級建築士)
幸い昔から人にそういうことをして自分は聞き手にまわることが多い人生であったので、ここに関してはうまくいっていますね!

ヒアリングシートを逸脱した打ち合わせであれ!

 私はクライアントのおもいをかたちに結びつけるため、事務所オリジナルのヒアリングシートを作成してお話を伺っています。

とはいってもこのシートは、どんな人にでも使用できるようなフォーマットとして用意したものなので、記されている内容は基本的なことばかりです。

たしかにこれらは情報としては必要であるのですが、もしヒアリングシートの項目以上に提案に結び付くことをクライアントが話し出したらそれを重要視するようにしています

パウレタ(一級建築士)
そうなったらもうシートなんかいりません!

クライアントにしゃべりたいだけしゃべらせてしまっています。時間が来てしまったら、シートは持ち帰っていただいて書いてもらってあとでメールやファックスで送ってもらっています。こういう流れが私にとっては最高ですね!

でも毎回そんなにうまい流れを私もつくれるわけではありません。正直最初のうちはシートに書いていることを聞くことだけの打ち合わせになってしまっていました。

どうすればそこから抜け出した打ち合わせにできるのか?

私は考えた末、何でもいいのでクライアントに関する情報を収集して、ヒアリングシートから脱線するような質問ネタを用意する準備をするようにしました。これが意外とうまくいっていて、現在では準備した以外の質問ネタも打ち合わせ中に思いついたりするようになりました。

クライアントも人それぞれであります。基本的なヒアリング内容プラス、その個人にあわせた質問ネタを準備することでより打ち合わせはより実りあるものになるはずです

クライアントの要望はまず受け入れろ!

 私はできるだけお施主様が考えていることすべてを吐き出してもらうように、何でも言っていただいています。

 なので多少無理のある要望であるとしてもまずそれは受け入れるようにしていますそこにも何か提案のヒントがある可能性があるからです。

パウレタ(一級建築士)
要望の組み合わせ次第でこれは無理だろう、と思えた矛盾が実現する可能性がでてくるときもまれにあるんですよね

そこが設計者としての腕の見せ所になったりもします。

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ただし、いろんな要望がでたあとは、クライアントに必ずその要望に関する優先順位を一応つけてもらうようにしていますけどね(笑)

いっしょに優先順位をつける作業は、設計者とクライアント双方が打ち合わせで出てきた内容を整理することもできます

パウレタ(一級建築士)
クライアント自身が無理をいっていることにこの時点で気づいてくれたらラッキーですね(笑)

打ち合わせの段階で提案へむけた方針付けを行ううえでもおすすめですね!

ここで重要なことはこの優先順位の設定は設計者とクライアントがいっしょに行うことに意味があります。くれぐれも設計者自身で勝手に優先順位をつけてしまわないように

ヒアリング時におけるクライアントとのイメージ共有方法

 クライアントがどんなイメージを描いているのかを共有することは、提案へ大きく結びついてゆきますさらに言葉以外の視覚情報は、設計者とクライアントそれぞれによるイメージのずれをより正確に調整することができるはずです。

ポータブルメディアの活用

現在ではスマホメディアの普及により、クライアントの多くはかんたんにその場で何かしらの画像などを引き出すことができるようになりました。

 以前住宅雑誌の切り抜きやコピーなどのファイルを持ってくるが多かったので、コピーさせていただいたりしてたのついこのあいだです。

パウレタ(一級建築士)
技術の進歩は早い!

設計者としてもスマホやタブレットを持参してダウンロードして収集した画像をクライアントから積極的に見せてもらったりするのはありがたいかぎりです。

パウレタ(一級建築士)
必要な場合は画像をデータで共有することも容易になりましたしね。情報の共有手段が多様化しているのを感じます

打ち合わせにおいては関連する資料の用意や似た事例になりそうな建築図面、模型などもすぐ出せる位置に準備をしておくといいですね。

手書きでプランやイメージを描いてみてもよい

もしある程度打ち合わせでプランやイメージが見えたなら、かんたんなスケッチを実演で行ってみるのもひとつの方法です。その場でたたき台ができることで、よりクライアントが欲していることが具体的にわかります。もちろん設計者としても自身の技を見せることによって、「お、やはり違うな!スペシャリストだな!!」と思わせることでより大きい信頼関係を得られることになるでしょう。

しかしですね、いきなりそれができるほど甘くはありません。それを見せるのでしたら、一応こう描いたらよく見えるという自分なりのフォーマットを用意してのぞむことを私の経験からおすすめいたします。

パウレタ(一級建築士)
けっこう緊張しちゃうものなんですよ(笑)

打ち合わせ後のクライアントの様子は必ずチェック!

さて、やれるだけの準備を行って打ち合わせを終えたとき、クライアントはどんな表情で、そして足取りはいかがであったでしょうか?そこは必ずよく見ておきましょう

満足したクライアントは自ら腰を上げる

こちらも経験談からお話しさせていただくと、すべてを吐き出せたクライアントは自分から腰をあげ、気持ちよく帰っていきます。そのときは私たち設計者もクライアントの要望とその奥にある本質を探ることができているので、すぐにでも設計したいという気持ちです。

 設計側から切り上げる場合はアフターフォローを忘れずに!

反対にこの場合は、ちょっと基本設計段階で何回も提案をしなくてはいけないことになるなど、これからの打ち合わせが長期化する可能性を秘めています。お互い時間もかぎられていますし、人間なので、そうなってしまうこともありますよね。しょうがないことです。

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でもそう思うだけではいけませんよ!

そういうときはきちんと当日もしくは翌日までにメールなどでフォローを行うことが大切です。

私ですと、いつも打ち合わせ後にその内容を記録した議事録を作成してメールでお送りいたします。その際に、質問などもいくつか出てくるので、それらをふまえ、何かまだ言いそびれたことがないかというクエスチョンマークを入れた言葉を添えたりしています。このとき、なんとなくの質問ではなく、自分なりにクライアントにこたえやすいような具体的な質問におとしこめるようなものにしています。そうすると、何かしら返信がクライアントからもあり、さらに彼らの要望の本質を掘り下げた情報を受け取れたりもします。

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とにかくクライアントの言葉やしぐさなどすべてのことを観察しましょう!

注意点!クライアントのメール文章を深読みしすぎないこと

会った際、私はクライアントの言葉やしぐさを観察しましょうと前述させていただきました。

しかし、メールに関してはあまり深く読み込まないようにしています。その書かれている事実のみを受け取るようにしています。メールの使い方は人それぞれです。簡潔に用件だけを伝える方から、少し感情をのせて書かれる方など様々です。その文章から掘り下げて読もうとしてもわかりません。もしメールを読んで何か含みがあるなと感じた場合は躊躇せずにすぐにクライアントと電話で連絡をとって確認をとりましょう。こういうフットワークが関係性を良好にするはずです。

まとめ:クライアントに対する愛情をきちんと表現しよう!

クライアントに興味をきちんともって接すれば、何を聞けばいいのかがわかるようになってきます。彼らが発する言葉や目線など、さまざまもことにアンテナをはって接してみてください。そうしているとクライアントもその姿勢に気づいて何かを設計者側に与えてくれるはずです。

これに関しては場数を踏んでいかないとわかってこない部分も多くあるかと思います。でも上記を意識してのぞむだけでもかなりその一度の打ち合わせの意義は大きくなるかと思います。うまくいかなくともクライアントに対する愛情が伝われば、少しずつ彼らは設計者に心を開き、すべてをゆだねてくれるはずです。

パウレタ(一級建築士)
図面を引くだけが建築設計の仕事ではないということです!

建築設計という仕事はクライアントありきの商売です。人の財産を自分のもののように扱って建物を設計していくことは、建築士にとって特権であります。そのためにはクライアントから託してもよいという信用を得なければいけません。任せていただかなければ私たちの仕事は何もはじまらないわけです。

その中で私はどうクライアントと接するかということは、いつも考えて行動しています。 勤務時代では当時のボスや先輩をながめながら、自分ならどうするのか、そうしたらクライアントがどんな反応をするのかを観察し、自分が独立してからその考えたことを実践してうまくいったこといかなかったことを修正して今があります。

パウレタ(一級建築士)
他者を想像して建築を設計していきましょう!

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