景気が後退し、就職事情が不透明な時代。そんな中で建築学生が将来を見据えて取りうる選択肢の一つが、大学院への進学です。

大学院在学中に一級建築士の受験資格が得られるようになったこともあり、社会に出る前に専門性を高め、キャリアの土台を固めたいと考える学生は増えています。
今回は、実際に大学院に進学した私の経験から、「大学院に入るために何をすべきか」、そして**「入学後にしておいたほうが良いこと」**を具体的にお話しします。
1. 大学院への入学準備:通常の受験とは違う「3つのステップ」
大学院の入学試験は、通常の大学受験とは少し異なります。特に重要なのは、試験勉強だけでなく、事前の準備とコミュニケーションです。
ステップ1:志望研究室への挨拶
まずは、入学を希望する研究室の先生に、受験前に挨拶に伺うのが礼儀です。これは「仮面接」のようなもので、あなたの研究への熱意を直接伝える貴重な機会です。
【挨拶時のポイント】
事前のアポイントメント: 必ず事前にメールでアポイントメントを取りましょう。
ポートフォリオの持参: 先生に指示された場合はもちろん、自身の設計課題のポートフォリオや、修士研究の企画書を持参することで、あなたの意欲をアピールできます。
ステップ2:大学院試験のための受験勉強
大学院の試験は、専門分野が中心となるため取り組みやすいはずです。
過去問の徹底研究: 過去問を解くことは必須です。大学によっては過去問を配布していることもあるため、志望研究室に挨拶に行った際に尋ねてみましょう。
英語は必須科目: 多くの大学院で英語の試験が課されます。専門分野に関する英文が出題されることも多いため、日頃から英語に触れておくことが重要です。
ステップ3:面接に向けた最終準備
面接では、事前に提出したポートフォリオや修士研究企画書について、より深く質問されます。
資料のブラッシュアップ: 挨拶時に先生から受けたアドバイスを反映させ、企画書やポートフォリオを修正しましょう。
卒業研究の準備: 卒業研究に関する質問は必ずされます。内容を分かりやすく説明できるよう、資料を用意して備えましょう。
これらの準備は、あなたの考えをより明確にし、大学院での活動をスムーズに始めるための助走期間にもなります。
2. 大学院入学後にやるべきこと:将来に「差」をつける過ごし方
大学院生活は、あなたの将来のキャリアを大きく左右する2年間です。以下の4つのことを意識して過ごしましょう。
研究論文と研究室活動
修士設計での修了も可能ですが、私は研究論文に取り組むことを強くお勧めします。論文作成は、物事を論理的に考える訓練となり、設計だけでは得られないスキルが身につきます。
研究室での活動を有効活用すれば、先生や先輩からアドバイスをもらいながら、効率的に研究を進めることができます。
設計コンペへの参加と自主活動
大学院在学中は、積極的に設計コンペに参加しましょう。入賞できれば、それがあなたのキャリアを語る上で大きな武器となります。
また、研究室活動とは別に、仲間と自主的に地域調査やプロジェクトに取り組むことも、社会に出る上で貴重な経験となります。
読書
まとまって読書時間を確保できるのは学生のうちです。専門書だけでなく、小説や教養書など、様々なジャンルの本を読んで、将来の人生で何度も読み返したくなる一冊と出会ってほしいと思います。
就職活動
現代の就職活動は、対面式の説明会や選考だけでなく、オンラインでのやり取りが主流になりつつあります。大学や研究室のネットワークを活用し、インターンシップなどを通じて自分を売り込む姿勢がより重要になります。
【就活で差をつけるポイント】
デジタルポートフォリオの充実: オンラインでアピールできるよう、ポートフォリオをウェブサイトやSNSで公開しましょう。
積極的な情報収集: 業界の動向や企業のアプローチ方法にアンテナを張り、変化に対応することが大切です。
3. 在学中に「一級建築士」を取得するメリット
建築士法の改正により、大学院在学中にも一級建築士の受験資格が得られるようになりました。これは、社会に出て働きながら勉強する社会人よりも圧倒的に有利なことです。
大学院の1年目で合格できれば、就職活動で非常に有利になります。学業や研究、就活と並行しての勉強は大変ですが、計画的に進めれば十分可能です。
まとめ:自分への投資が、未来を変える
私が学生だった頃も、就職活動は厳しい時代でした。しかし、その経験から分かったのは、不確実な時代だからこそ、自分自身に投資することの重要性です。
大学院で専門性を深め、資格を取得し、キャリアの土台を固めること。それは、これから社会に出ていくあなたが、何者にもなれる可能性を秘めた、最高の「自分への投資」です。
後で後悔しないために、今から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。