このブログは普段、建築学生や現役の建築士に向けて情報を発信していますが、最近、建築学科進学を目指す高校生の方々から直接相談を受ける機会が何度かありました。

そこで今回は、私自身の経験から、これから建築を学びたいと考える皆さんのために、後悔しない進路選択のヒントをお伝えします。
後悔しない大学選びの3つのポイント
大学選びでは、偏差値や立地も大切ですが、建築学科ならではの視点を持つと、より充実した学生生活を送ることができます。
1. 多様な研究分野がある学校を選ぶ
建築学科の魅力は、建物を設計する「意匠設計」だけではありません。建物の骨組みを考える「構造」、電気や空調を計画する「設備」、街全体をデザインする「都市計画」など、非常に多岐にわたります。 多くの研究分野がある大学を選ぶことで、入学後に自分の本当に興味がある分野を見つけることができます。
↓建築学生向けに大学卒業後の就職先に関する記事を書いています!
2. 教わりたい先生がいる学校を選ぶ

現場の第一線で活躍している建築家や研究者が教壇に立っている大学は、大きな刺激を与えてくれます。 「この人に教わりたい!」と思える先生を見つけることは、試験勉強のモチベーションにも繋がります。大学の教員一覧を見て、先生方がどんな活動をしているか、ぜひ調べてみてください。
3. 都会の大学を選ぶ
これは建築学科ならではのメリットです。建築を学ぶ上で、多くの建物を見て、感じることは何よりの勉強になります。 東京や大阪といった都市圏の大学を選べば、有名建築が身近にあり、いつでも気軽に見学に行けます。建物に囲まれた環境で過ごすことは、あなたの建築に対する感性を磨く貴重な体験となるでしょう。
4.受験生が抱える大学選びのリアルな疑問

① 卒業後の「就職の強さ」で大学を選ぶべきか?
就職の強さ、特に大手設計事務所への就職実績は、大学選びの重要な指標の一つです。ただし、確認すべきは「就職率」ではなく**「卒業生がどのような設計事務所やゼネコンのどの部署に入っているか」**という質的なデータです。
- 大学院進学率のチェック: 大手の設計事務所では、大学院卒を前提とする採用が多く、**「大学院進学率が高い大学」**を選ぶことも、結果的に就職の強さに繋がります。
② 推薦・AO入試対策で高校生が力を入れるべきことは?
推薦やAO入試は、学力試験だけでなく、**「建築への熱意と表現力」**が問われます。
- ポートフォリオ作成: 高校時代に作った模型やスケッチ、写真などを整理し、**「なぜ建築を学びたいのか」**というストーリーを明確に伝えられるポートフォリオ(作品集)の準備を早くから意識してください。
- 面接対策: 建築家や作品について自分の言葉で語れるよう、日頃から建築雑誌や書籍を読む習慣をつけましょう。
③ 地方の国立大学と都会の私立大学、本当に「都会」を選ぶべきか?
「都会の大学を選ぶ」というアドバイスは、建築の見学機会が多いというメリットから推奨していますが、**「学費」や「研究分野の専門性」**も重要です。
- 国立のメリット: 学費を抑えられ、構造や都市計画など研究分野が充実していることが多いです。
- 最終判断: 学費負担が厳しい場合は、迷わず国立大学を選び、夏休みなどを利用して都市圏の建築物を見学に行くなど、戦略的なカバーを行えば十分です。
高校生のうちにやっておくべきこと
勉強は「数学」を徹底的に
試験科目の中で特に力を入れてほしいのは「数学」です。建築を創るという行為は、実は問題解決に他なりません。設計や実務の現場では次々に問題や課題が出てきますが、数学的な思考力があれば、そのプロセスを論理的に組み立て、解決に導くことができます。数学は、将来必ず役に立つ一生もののスキルです。
自分の街にある建築を見に行こう
「いいな」と感じた建物に実際に足を運び、なぜ良いと思ったのかをメモしたり、スケッチしたりしてみましょう。 特別な知識は必要ありません。ただ「よく見る」ことが大切です。何の知識もない今のうちに、建築を素直な目で見てみてください。
建築士の資格勉強はまだしなくていい
中には、高校生のうちから建築士の資格教材を読んでいる人もいますが、これは大きなミスです。 まずは高校の基礎学力を固め、受験勉強に集中してください。大学で建築を学び、実務経験を積まなければ、建築士の資格は取得できません。難関な資格試験を突破するためには、まず受験勉強を乗り越えるだけの地力をつけることが何より重要です。
↓一級建築士資格の受験制度に関する記事はこちらです!事前に読んでおいて将来プランを考えておくことも大事ですよ!
建築の未来は、あなたが創る

「建築の仕事は減っていくのではないか?」という声を聞くこともあるかもしれません。しかし、そこに人が生活する限り、建築行為は決してなくなりません。
新築だけでなく、既存建物のリノベーションや、さらには仮想空間での建築アプローチなど、建築士の職能はこれからも無限に広がっていきます。
どんな時代でも、あなたが自分の仕事でどう役に立てるかを考え、一歩ずつ前進していけば、きっと素晴らしい建築人生が待っています。