建築学科へのご入学、おめでとうございます。
新しい生活に胸を膨らませ、建築という未知の世界への期待に満ちていることでしょう。私もそうでした。しかし、この大学生活をどう過ごすかによって、その後の人生は大きく変わります。
今回は、一級建築士として実社会で働く私から、当時の自分に伝えたい、普遍的なアドバイスをお話しします。ここに書かれていることがすべてではありませんが、あなたの建築人生をより豊かにするためのヒントになれば幸いです。
1. 建築への熱意は「入学時がMAX」ではダメだ
入学当初は誰もがやる気に満ちています。しかし、その熱意をすぐに燃やし尽くしてしまう学生も少なくありません。焦って全力で走り出すのではなく、4年、6年と続く長い道のりを完走できるよう、モチベーションを徐々に上げていくことが大切です。
モチベーションを維持するコツ
受動的な学びからの脱却: サークルや誰かに言われるがままに勉強するのではなく、自分から能動的に学んでみましょう。受け身の姿勢では、せっかくの学びも身につきません。
「本物の建築」を体感する: 建築雑誌で見る写真も良いですが、まずは自分の目で、本物の建築作品を見に行くことを強くお勧めします。写真では分からない空間の広がりや、素材の質感、光の入り方を肌で感じることが、何よりも大切な学びになります。

2. まずは建築専門書より「小説」を読んでみよう
大学の図書館や書店に行けば、たくさんの建築本が並んでいます。しかし、建築専門書は独特の言い回しが多く、読書に慣れていないと途中で挫折してしまう人も少なくありません。
**まずはストーリーのある小説を読んで、本を読む習慣をつけましょう。**そうすることで、次第に自分の好きなジャンルや作家が見つかり、本を選ぶ「センス」が養われます。本を読むセンスは、将来的に難しい専門書を読みこなす上で、必ず役立ちます。
もし「どうしても建築本から読みたい!」という強い気持ちがあるなら、まずは建築家・安藤忠雄氏の著書がお勧めです。自身の経験に基づいた文章は、とてもリアリティがあり、読みやすいはずです。
3. 将来に直結する「好き・得意」の見つけ方
建築学科に入ったからといって、誰もが建築の設計者になるわけではありません。私の大学では、約150人の学生のうち、設計の道に進んだのはわずか10%ほどでした。しかし、それは決して「負け組」ではありません。
建築の仕事は設計以外にも多岐にわたります。構造、施工、行政など、さまざまな分野で建築に関わることができます。
大学生活の中で、どの分野が**「好き」で、どの分野が「得意」**なのかを見つけておくことが、将来のキャリアを考える上で非常に重要です。設計ができなくても、建築に関わる仕事はたくさんあるのです。
自分の将来に納得するためにも、この「好き・得意」を意識しながら授業に臨んでみましょう。
4. 学生の特権を最大限に活かす3つのアドバイス
学生である時間は、社会人にはない大きな特権です。
人間関係を構築する: 先生や先輩、同級生との繋がりは、将来の自分を助けてくれる大切な財産になります。社会に出てから、この人脈がどれほど貴重なものか実感することになるでしょう。
大学という看板を活用する: 大学や教授の名前は、学生だからこそ使える大きな武器です。学内活動だけでなく、外部の活動にも積極的に参加し、自分を成長させるチャンスにしてください。
一人旅に出てみる: 長期休みを利用して、一人旅に出てみましょう。誰も知らない場所で一人になる時間は、自分と向き合う貴重な機会です。行き先はどこでも構いません。この経験が、将来のあなたの血肉となります。
5. 一級建築士資格は「計画的」に目指そう
建築士法の改正により、これからは卒業後すぐに一級建築士試験を受験できる時代になります。これは、働きながら受験する社会人に比べて、圧倒的に有利なことです。
もし建築士を目指すなら、ざっくりとでも良いので、大学院まで進学して在学中に取得するという計画を立てることをお勧めします。働きながらの受験勉強は想像以上に大変だからです。学生のうちに勉強の習慣があるうちに、この大きな壁を乗り越えてしまいましょう。
まとめ
このブログを読んでくださった皆さんに伝えたいのは、**「できるだけ後悔しないように」**ということです。
もちろん、無駄に思える経験も、後から見れば次につながる糧になります。しかし、時間には限りがあります。後で後悔しないよう、この貴重な学生時代に、少しずつでも未来の自分に投資する気持ちで過ごしてみてください。