夏休みもおわるこの時期になると、卒業設計のテーマをまだ決めかねて困っている建築学生も多いのではないでしょうか。テーマ探しはなかなか難しいものですよね。私も大いに悩みました。

以前、卒業設計の進め方に関するアドバイスをお伝えしましたが、今回はテーマを見つけることに焦点を絞り、いくつかの方法論を整理してお伝えします。
社会背景からテーマを探す
今を生きる学生として、社会の流れや動向に目を向けてみましょう。現代の社会背景とマッチした作品は、話題性があり、見る人の目を引く力があります。インターネットで多くの情報を調べ、それを建築にどう落とし込めるかを探る作業は骨が折れますが、そのプロセス自体があなたの視点として蓄積されていきます。
事例: 私の同級生や後輩で、当時話題になっていた築地跡地の活用をテーマに掲げた人がいました。その場所はポテンシャルが高く、社会的な問題意識と敷地がリンクしていたため、建築に反映しやすいテーマでした。
身近な問題からテーマを探す
普段の生活で気になったことの積み重ねも、卒業設計のテーマになり得ます。いつも当たり前に見ていた風景や、その変化は、あなた自身のフィルターを通してどのように映り、建築的な問題意識として生じるでしょうか?
事例: 友人の話ですが、いつも通っていた大きな銭湯が取り壊されたことがきっかけで、「なぜあの建物は壊されたのだろう?」「跡地には何ができるのだろう?」と疑問を持ち、その敷地を活用して銭湯に代わるコミュニティを建築でつくりあげることにしました。とても興味深い作品に仕上がっていましたよ。
先行事例から傾向を探る
まずは、これまでの卒業設計作品をざっと眺めてみましょう。近代建築から出版される各大学の優秀作品集や、レモン展、せんだいデザインリーグの作品集などから、テーマの傾向を探ってみるのも一つの方法です。
今、あなたと同じ時代を生きる学生が、どんなテーマに興味を持ち、建築で問題を解決しようとしているのかを探ることで、自分自身のアイデアを整理するヒントが得られます。
敷地からテーマを探す
テーマを見つける最も近道な方法は、敷地から考えることです。
建築は敷地や周辺環境があって初めて成り立ちます。先に大きな社会テーマを掲げてしまうと、それに合った敷地を探すのが非常に難しくなり、設計期間を無駄にしてしまうリスクがあります。特に卒業設計のように半年という限られた期間で設計をまとめる場合、このアプローチはおすすめできません。
注意点: 私の知り合いにも、ゴミ問題や震災に関するテーマを掲げた学生がいましたが、結局敷地を見つけられず、テーマを変更せざるを得ませんでした。もしも地元に思い入れがあるなど、明確な理由がなければ、まずは身近な場所から敷地を探すことをお勧めします。
アドバイス: 今住んでいる場所や実家に近い場所を選ぶと良いでしょう。敷地には多くのヒントが隠されているため、設計で悩んだりした場合にすぐ足を運べる場所が理想的です。
まとめ:大切なのは、自分の視点を信じること
今回は、私や友人、そして知人の学生たちの例を挙げながら、卒業設計のテーマに対する取り組み方についてお話ししました。
卒業設計は自由度が高いため、いつもと違うことをしようと、つまずいてしまう学生が多くいます。しかし、基本的な考え方は普段の設計課題と変わりません。自分自身の興味や身近な視点を大切にすることで、よりオリジナリティを感じさせる内容になっていくはずです。
最後に、どんなテーマを選んだとしても、それが敷地の中に建築として表現できるかどうかを常に確認しながら進めていってください。
卒業設計が、あなたの建築人生において素晴らしい経験と思い出になることを願っています。