建築学生へアドバイス

建築学生よ本を読もう!おすすめ建築関連書籍43選

建築は訪れて触れて感じ、そして私たちであれば設計するという存在でもあります。しかしながら建築を書物で読むということも大事です。

それはすぐに何かに役立つわけではないのですが、確実に読んだ分あなたのなかに蓄積され、人生の糧になることでしょう。

さて、建築に関する本といいましてもそれはたくさんあります。今回は私が厳選いたしました本をテーマにわけながらご紹介していきたいと思います。

パウレタ(一級建築士)
たくさん読んだなかからセレクトしたものなので、わりと充実したものになっていますよ!

建築ノンフィクション

建築関係の本もいろいろあるのですが、特に私が好きなのが建築プロセスをドキュメンタリータッチで描くノンフィクション本ですね!建築家が主役であったり施主がそうであったりと設定は様々なのですが、そこにはひとつの建築が生まれることに対するリスペクトがたくさんつまっていて自分の選んだ建築という道に誇らしさを感じることができます!

光の教会安藤忠雄の現場

安藤忠雄の象徴的代表作「光の教会」の建設計画をとおしたストーリーです。施主と建築家との出会いから始まり、名建築が生まれる過程が描かれています。教会を担当した安藤事務所スタッフや現場監督など登場人物の様々な視点から語られたスタイルに、読んでいてついそれぞれの立場になってしまいます。読後感の爽快に感動も最高ですね!この本を読んでから建築ノンフィクション系の書物を探しては読み漁ることになりました。

<読みやすさ★★★★★>

磯崎新の都庁

現在ある東京都庁は建築コンペを経てつくられたものです。設計したのは世界の丹下こと丹下健三氏ですが、本の主役は同じくコンペに参加した建築家磯崎新とそのスタッフです。物語では都庁のコンペ案をつくりあげる過程がおもに描かれていてこれが面白い!私たちはコンペの成果物である提案作品を見ることくらいしかできません。それらがどのようなプロセスを経て生まれたかという苦労や思考はそこに関わった人にしかわからないわけです。そこがこの本では描かれているのが興味深く、とても素敵な本となっています。

<読みやすさ★★★★★>

中野本町の家

建築というものは基本、人の手で設計、施工され、必ず寿命というものが存在します。でも寿命は建物の物理的な理由だけはありません。この本は、あるひとつの建築住宅作品が建築家伊東豊雄の手によって設計されが完成し、さらに解体にいたるまでが施主の目線から描かれています。住宅には個人の歴史、家族の歴史が刻まれています。建築を設計することの責任と自分の設計した建築が壊されていくという現実に対する寂しさがその読後の余韻としてあらわれてきます。

※すばらしい本なのですが残念ながら絶版です

<読みやすさ★★★★☆>

後藤 暢子(著) 後藤 文子 (著) 後藤 幸子 (著)

体験的高齢者住宅建築作法

この本では、編集者やライターとして住宅に関わってきた施主が著者として新たな終の棲家を若手建築家に依頼して建てるプロセスを率直に綴っています。著者は職業柄、建築に対する理想も高い人なのが文章から読み取れます。だからこそ、その過程も困難がある、でもそれは建築家にとってはすばらしい壁となっていたようです。そんな著者と建築家とのやりとりする姿がリアルに描かれています。本にあらわれているものは建築家と住宅を建てるという強い想い。こんな施主にめぐりあえるのは建築家としては勲章に等しいですね!

<読みやすさ★★★★☆>

書庫を建てる~1万冊の本をおさめる狭小住宅プロジェクト~

螺旋を描く階段と円柱状の壁に1万冊もの蔵書が美しくおさまった建築写真が魅力的な表紙の本書。

この本は単なる書斎をもちたいという男のロマンを語ったものではありません。そこにはなぜ施主である筆者が書庫を建てたかという経緯から始まり、それを受けて建築家がどのような考え方をもって設計したか、そしてその要求を実現させるための施工者の苦労や心意気が語られています。

建築の過程が克明に描かれ、それぞれの思い入れと立場の違いを読んで感じることができ、

ものづくりの仕事の臨場感ともに誇りを感じとることができます。

<読みやすさ★★★★☆>

新しい郊外の家

本書では「東京R不動産」のディレクターであり建築家である著者が郊外に可能性を感じ、土地探しや資金調達を行って家を建て、都心との2拠点生活を始めるまでの過程が楽しく愉快に描かれています。

その内容は今まで住んできた家の間取りから始まって自身の家族の歴史(家庭事情暴露しすぎで奥さんのOKでてるのかなと心配になるくらい)まで掘り下げて考察されながらも、住宅問題、都市と郊外、働き方などにも発展し、考えさせられます。

二軒家をもつという発想はこの時代なかなかできなくなっていますが、テレワークがあたりまえにとなった昨今、視点をまた変えてみると興味深かったりします。

著者の人柄があらわれているかのような軽快で楽しい文章のなかにドキュメンタリー感もあり、最終的に何か感動しちゃいましたね。

<読みやすさ★★★★★>

町の未来をこの手でつくる~紫波町オガールプロジェクト~

全国の地方自治体では「地域活性化」「まちづくり」と言って多額の補助金を公共事業へとつぎこんできました。しかし目算が甘く、施設をオープンしたもののすぐに閑古鳥が鳴いてしまう事例が多いです。この本では主人公が補助金に頼らずに自分の故郷を再生していくドラマが描かれています。事例のないプロジェクト手法を推し進め、立ちはだかる困難と懸命に向き合う登場人物たちに敬意を表したくなりますね!

<読みやすさ★★★★★>

建築の見方を学ぶ

建築鑑賞入門

 この本は建築を鑑賞する際、どこに着目すればいいかがポイントをおさえながらシンプルな言葉で書かれています。鑑賞するというのは、何となく見るのとはちがいます。意識付けや知識の準備が必要で、この本はその際にどんな部分に着目すればいいかということを伝授してくれます。

できるだけ具体性を保ちながらポイントをおさえて伝えてくれているのがわかりやすいです。本で書かれたポイントを頭に入れながら建物を見てみると、より感覚が研ぎ澄まされるはずですし、また建築をすでに学んでいる人たちにとっても基本をとらえなおす良い機会となるはずです。

<読みやすさ★★★★☆>

W.W.コーディル他 (著) 六鹿 正治 (翻訳)

谷口吉生「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館」

日本を代表する建築家谷口吉生の傑作「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館」をとりあげ、徹底的によく見るための建築ガイドブックという言葉がぴったりの著書です。

 著者である建築家古谷誠章氏、鑑賞のポイントをピックアップし、写真と文章によって解説をおこなってくれます。プロの視点から空間や素材、ディテール、選定した家具や照明器具にまで及び、詳しく紹介がなされ、さらには建築の完成にまで至った背景や、猪熊弦一郎氏や設計者谷口吉生氏などにもインタビューを行い、その建物に関するあらゆることがここには網羅されている密度の濃いものとなっています。

※とても良質な本なのですが残念ながら絶版とのことです(中古で探してみましょう)。

<読みやすさ★★★★★>

宮脇檀の住宅設計テキスト

 住宅作家として著名であった宮脇檀氏による良質な住宅設計の手引き書です。作品は今となっては古いものとなっている場合もありますが、住宅にとって大切な要素を丁寧に語ってくれます。

もちろん住宅設計の教科書として読むこともありなのですが、住宅のどこを見ればいいかという点で四でも非常にわかりやすいものとなっています。

<読みやすさ★★★★☆>

宮脇檀建築研究室 (著)

建築と場所性

建築家なしの建築

この著書は世界各地の様々な国々を見て歩いて調査してきた著者による、1964年に開催された展覧会をもとに編集された本です。この展覧会や本は多くの建築家らに影響を与えるものとなりました。

本書では、世界の建築家が設計していない、穴居、樹上住居、茅葺き屋根の住居など、風土的自然発生した建築や都市の数々が写真と解説を添えて掲載されています。建築を学ぶにあたって良質な本であるだけでなく、旅行の案内書としても活用できるでしょう。本書の序文も素晴らしいのでぜひ読んでください。

<読みやすさ★★★★☆>

B・ルドフスキー (著) 渡辺 武信 (翻訳)

集落の教え

本書は建築家原広司が世界の集落調査をとおして学びを、短いフレーズと写真や図版を添えて構成されたものとなっています。その建築的エッセンスが凝縮された言葉は、哲学的な普遍性があります。言葉を理解しようと努めるのでなく、その集落の写真を著者がどのようにとらえたか、そして読んだ読者はどう感じたかということを意識して読んでみることをおすすめしたいです。建築を言葉としてとらえるということを私はこの本から学ぶことができました。

<読みやすさ★★★★★>

安藤忠雄の書いた本

言わずと知れた世界的建築家安藤忠雄。彼に関する本って多いですよね。でも売れている理由というのが実際に読んでみるとよくわかります。彼の書く本は、けして他の建築家のように難しい言葉を使っているわけではなく非常に読みやすいんです。そして言葉が率直で熱いんですよね。読んだ人は彼のファンになるでしょう!

建築を語る

独学で建築を学び、そこから世界を代表する建築家とまでになった安藤忠雄は、ついに日本の最高学府である東京大学大学院の建築学科教授として迎えられます。著書はその当時の大学院生への講義をもとにつくられたものです。たいへん文章も読みやすいですし、ダイレクトなメッセージがぐっと私の中に入ってきましたね!それからというもの彼の作品を実際にたくさん見に行くことになりました。
<読みやすさ★★★★☆>

安藤 忠雄 (著)

連戦連敗

この本も上記と同様に東京大学での講義を本にしたものです。安藤忠雄が書いた本の中で私は一番好きで何度も読み返していますね。何が良いって建築コンペについてのエピソードが描かれているのがいい!しかも世界的な建築家ら集う最高の舞台が用意されていてのガチンココンペ勝負です。そこに日本を代表して安藤忠雄自身も真っ向から戦いに挑んでいるんです。この著書を書いていたとき、安藤忠雄でしてもコンペの勝率は10~20%くらいであったそうです。何度負けても挑戦するのは真剣勝負からでこそ生まれる創造力があるだと彼は言います。情熱的なすばらしい言葉です!
<読みやすさ★★★★☆>

安藤 忠雄 (著)

建築に夢をみた

この本は一般の人にもわかりやすく書かれた文庫本となっていて、はじめて安藤忠雄本を読む方おすすめです。彼自身の体験や勉強しきたことが語られていて読みやすく、特に彼が旅先で訪れた名建築の数々について語るところなんかは建築を学び始めた学生さんにはちょうどいい勉強のとっかかりになるかと思います。学校の講義を聞いているよりもずっといいかもしれませんよ、というと語弊がありますかね(笑)。
<読みやすさ★★★★★>

コルビュジェの書いた本

近代建築の三大巨匠の一人であるル・コルビュジェ、彼の作品や考えは多くの建築家に影響を与えました。まず彼の建築作品を見てほしい。穴があくまで読み解き勉強してほしい。写真、図面、文章、そしてその地にまで足を運んでもほしいです。最低限は彼の作品をはじめとした功績には目を通しておくと、大きな歴史の流れを経て今なんだということを理解できますよ。もちろんフランク・ロイド・ライトやミース・ファン・デル・ローエという巨匠たちも著書を残していますが、とりあえずコルビュジェ!おさえておいてください!

建築をめざして

コルビュジエが自伝を織り交ぜながら建築思想を宣言している本です。「住宅は住むための機械である」という彼の有名な言葉はこの本から生まれました。仕事から社会に問題提起し、思想をキャッチコピー化し作品として表現するという、理論から実践までをプレゼンテーションしたスタイルから学ぶべきところは多いです。建築をやってる以外の人にも読んで欲しいですね。
<読みやすさ★☆☆☆☆>

ル・コルビュジェ (著) 吉阪 隆正 (翻訳)

小さな家

コルビュジエが隠居する両親のために作ったスイスの湖畔に建つ家を彼自身が説明した本です。住宅をまず設計し、それからそれにふさわしい土地を探したというのは有名な話ですよね。 わずか60㎡の小さな家には多くの愛に満ち溢れたアイディアが詰め込まれています。 本自体も設計プロセスを80ぺージほどにまとめたコンパクトなものとなっています。写真やコルビュジエの描いたデッサン画が載っていて、それらを用いながら設計するときの彼の視点がうかがえて興味深いです。こだわり箇所や、敷地を選ぶまでの経緯などあますことなく書かれている本です。
<読みやすさ★★★★☆>

ル・コルビュジェ (著) 森田 一敏 (翻訳)

建築論

建築の本はなんだか小難しい、そう思えたのはこれらの類の本のせいでもあります。建築を学び始めたばかりの学生はまだ読まないほうがいいです(笑)。でも建築を学んでいってからこれらの本を手にとるとまたその考えを改めることになるかと思います。建築論というものがあるということの誇らしさ、この学問の道で良かったと思えるようになればあなたも立派な建築人!

マニエリスムと近代建築

コーリン・ロウという建築学者による論考集成で、多くの建築人に読まれてきた本です。表題にあるマニエリスムとは16世紀から17世紀にかけて生まれた美術様式を言います。この様式はルネサンス期に完成した自然描写技巧を駆使しながらも、反対に不自然なまでの誇張や非現実性な表現にまで至っているのが特徴です。著者はマニエリスムに触れながら近代建築が不自然で矛盾のある表現だと論じています。その他の論考 「理想的ヴィラの数学」では、コルビュジエ作品とパラディオ建築の類似性を数学的に証明し考察しています。この論考が一番わかりやすいものになっていますね。これだけでも読んでみて、もしいけそうなら次に表題とこちらも有名な「透明性-虚と実」を読んでみてください。
<読みやすさ★☆☆☆☆>

コーリン・ロウ (著) 伊東 豊雄 (翻訳) 松永 安光 (翻訳)

建築の多様性と対立性

アメリカ人建築家ロバート・ヴェンチューリによるこの著書は、建築を学ぶ人たちにとってバイブルとなっています。彼もコーリン・ロウより早く近代建築に異論を唱えた人で、歴史的建築を事例にあげながら単純化されすぎたこれらを批判しています。近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの名言「less is more」を「less is bore」と皮肉った言葉は有名です

でも著書はただの近代建築アンチ本ではありません。コルビュジエ作品について多様性と対立性が見て取れると擁護しています。彼が批判しているのは近代建築における排除による安易な統一性を否定しているんです。つまりは当たり前に今私たちの目の前に乱立している建築群です。建築史の基本的な流れを理解したあと再読するとより著書の素晴らしさがわかるでしょう。ちなみに後半の自らの作品の解説はやや退屈かな。だってあまり良いと思えないんですもの(笑)。
<読みやすさ★★★☆☆>

R・ヴェンチューリ (著) 伊藤 公文 (翻訳)

建築の解体

2019年度、建築界のノーベル賞と言われているプリツカー賞を受賞した日本人建築家磯崎新の書いた建築論考です。1975年に書かれたこの著書は近代建築の考えが解体し多様化していった1960年代後半の動向を、当時のアンビルドアーキテクトを含めた新鋭建築家の作品や論文、著書などを取り上げ、分野別に類型化しながら紹介し考察しています。アートに近いものや都市計画案など建築以外のものも登場してきます。 あの時代に世界の建築家の状況を把握しポストモダニズム到来を予見しているところがすごいです。彼の知性が今の時代ピークを迎えていたならどんなことを言っていたのか個人的にはとても興味を持ちますね。

さて、私なりに読み解いた文章を読者にうまく伝わりましたでしょうか?正直、建築論で書く文章にだいぶ時間がとられてしまいました。このように、建築論は自分で読み、誰かにわかりやすく伝えようとすることで論考の意図を理解できるものなのかもしれません。是非時間が多くとれる学生時期に挑戦してみてください!
<読みやすさ★★☆☆☆>

都市論

街並みの美学

本書は街並みの美しさはどのようにつくられるのかを、世界の都市の構造から建築空間に落とし込み理論的に考察している良著です。建物単体を見るのではなく、それらを中心とした街並みのあり方や、その良い例を豊富な図版・写真によってわかりやすく説明されています。

ややヨーロッパびいきな視点もありますが、世界の都市空間を歴史や文化的側面から丁寧に解説され、日本との比較も面白く読め、文章も美しくとても明快でわかりやすいです。

難解な建築や都市論の本が多いなかで、建築を始めてから間もない学生の方にも非常に読みやすく、おおまかな建築の知識も知ることができます。是非おすすめしたい1冊に入りますね。
<読みやすさ★★★★☆>

芦原 義信 (著)

都市のイメージ

 1960年にアメリカの都市計画家であるケヴィン・リンチによる都市の「わかりやすさ」について書かれたユニークな本です。

著者は都市は人々によってイメージされるものであるとし、その可能性をイメージアビリティ(imageability)と提唱し、これを高めることが美しく楽しい環境を創り出す要件であるといっています。

本書ではアメリカの3都市を対象に、都市のイメージの形態を住民がどのように感じているかをアンケート調査などを行って分析し、人々の環境に対するイメージの成分やその構成する要素としてあげて論じています。

本書のすばらしいところは、都市の形態や見た目そのものを評価する実践的なアプローチから分析し、デザインや設計に対して正面からとりくんだ点が読んでいてとてもわかりやすい良著です。
<読みやすさ★★★☆☆>

ケヴィン リンチ (著) 丹下 健三他 (翻訳)

見えがくれする都市

槇文彦をはじめとした建築家らによる「江戸・東京」の都市の構造を分析し読み解いた論文集です。

本書では、江戸の町と現代の東京という都市の表層から見えかくれした構造部分を道や地形による影響、住宅の配置などから、日本人の古来からの空間に対する認識についてが、地に足のついた丁寧な視点で考察がなされています。

最終章の、日本人が、「奥」というものを重視している点に注目した「奥の思想」が比較的わかりやすく読みやすいのでおすすめです。
<読みやすさ★★★☆☆>

槙 文彦、若月幸敏、大野秀敏、高谷時彦 (著)

錯乱のニューヨーク

世界的建築家レム・コールハースによって書かれた都市建築論です。建築や都市を学ぶ必読書のひとつとされ、「この書を読まずして、現代建築を語るなかれ」と建築家磯崎新氏も言っています。

本書の内容は、ニューヨーク、マンハッタンの建築群がどのように形成されていったかについてが建築家独自の視点で書かれています。

記者や脚本家を経験した著者の文章は詩的で独特な言い回しや比喩があり、内容にもまとまりがなく、とにかくくせがすごいです。まさに錯乱している文章の数々。その表現のせいか、ニューヨークの成り立ちというよりはその都市の生態を語っているかのような本です。文学作品を読むのが好きな人にとってはとても魅力的に感じる本だと思います。
<読みやすさ★★☆☆☆>

レム コールハース (著) 鈴木 圭介 (翻訳)

外部空間を学ぶ

外部空間の設計

本書では日本と海外それぞれの空間概念の違いをあげながら、外部空間がどんな秩序や構成で形成され、どんな設計手法があるかを図や写真を用いて解説してくれます。これらの数々は建物の内部空間を設計する上でも非常に参考になる内容となっています。

建築の原理を形式的にとらえながらの文章は、大学で教鞭もとられた著者の教育者としての心遣いが現れているような気がします。設計の教科書的存在として是非ともおすすめしたい良書です。

※良書ではありますが、残念ながら絶版となっています。図書館で借りて読んでみてください。

<読みやすさ★★★★☆>

芦原 義信 (著)

広場のデザイン―「にぎわい」の都市設計5原則

こちらは、土木や都市デザインを自ら出がけている著者が国内外の広場を写真や図などでらわかりやすく解説する本となっています。しかも良い部分だけでなくどういうところがだめなのかも説明してくれている点が親切です。

先程の著書が原理について書かれた本であるとすれば、こちらの本は実例に基づいて外部空間をとらえなおして書かれた本、という感じでしょうか。古典空間と現代空間とあわせながらの丁寧な解説に著者の人柄や仕事への姿勢がうかがえ、こちらも非常に良い本です。

<読みやすさ★★★★☆>

建築プロジェクトとソフト

建築をつくるにあたっては、設計や工事のほかの部分が複雑にからみあって社会に成立しています。ご紹介するこれらの本はその過程にはどんな側面があるのかを教えてくれます。新しく建物ひとつ建てるだけで文句が言われるこの時代、よりよい建築をつくっていくには、ソフトを充実しなくてはいけない。そこに力を注ぐ方たちの言葉には、建築のこれからを新たな視点で開拓しようとする強い意志を感じます!

プレデザインの思想

この本では著者の建築計画学者という仕事の紹介、そして自身の研究とコンサルタントとして事業計画に関わる実践から導き出されたよりよい建築空間の実現方法が語られています。建てる前、まず建物に必要なこと、人がそこでどうするのかを明らかにすることが大切です。建築が美しければ良いとは限りません。設計者にとってもその行為の根拠を見直すことのできる本になっています。
<読みやすさ★★★☆☆>

建築プロデュース学入門

建築プロデュースとは、建物をつくるうえでの資金集め、人集めなど、プロジェクトの方向づけ、広報など事業性の観点から関わっていく仕事です。建築はものづくり面も重要ですが金と人がどう関わっていくかのプロセスも重要です。著書では建物の出資者、共同協力者をどう説得していくかを事例を用いながら深く掘り下げ、ノウハウにまで落し込んでいます。一つの建物をつくることにはこんなにもエネルギーが注がれているかということが文章から伝わってきます。
<読みやすさ★★★★☆>

施設参謀

オフィス、店舗等の施設を建築するにあたっては、クライアントが設計者に設計を依頼し、ゼネコン等が施工する一般的な流れがあります。そんな中、より良い建物を実現したいクライアントのため、第三者的な立場で助言を行うプロジェクト・マネジメントやコンストラクション・マネジメントという仕事があります。この本ではそれらの業務を企業から請け負う会社代表の著者が、建設コンサルタントの必要性を今までの経験から事例とともに、わかりやすく伝えています。クライアント目線でプロジェクトに本気で関わろうとする情熱を著書から感じます。
<読みやすさ★★★★☆>

建築と不動産のあいだ

敷地があって建築があります。このように近い分野ある建築業界と不動産業界ですが、実際、相互には壁があります。それは建築は建築基準法、不動産は民法・宅建業法と法律が異なりますし、建築士、宅地建物取引士と資格も異なり、各々が建主に関わってしまっているからです。設計事務所に勤務後不動産業へ転職し、不動産会社を立ち上げた著者は、現在建築と不動産それぞれの分野のコラボレーションをする事業を行っています。本では建主の想いを不動産会社・設計者・工事会社がしっかりと受ける提案フローが紹介されています。それらはクリエイティブな価値をつくりだす建築の流れを作り出していて設計者としても大変参考になるものとなっています。
<読みやすさ★★★★☆>

建築働き方

ほしい暮らしは自分でつくる ぼくらのリノベーションまちづくり

この本は、若手建築家による設計事務所を立ち上げたノンフィクションストーリーです。彼の建築手法は、リノベーションによってエリアに価値を見いだし、社会課題をビジネスで解決するアプローチです。本書で描かれている著者の地元を盛り上げていく姿や、設計事務所周辺の地域活性や人のつながりを広げている様子は読者に時代のリアリティを感じさせる内容となっていて胸が熱くなります。 様々な建築で生きていく方法があるこの時代において(著者は著者なりの道をみつけたわけです)、この本は自分の方向性を考えさせる気持ちを奮い立たせてくれるはずです。

<読みやすさ★★★★★>

だから、僕はこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェントスタイル

東京R不動産という現在では建築をやっている人ほとんどがご存じのサイト。この本ではその活動と仕事にのスタイルについての考え方を体験談をふまえながら語られています。働き方によって社員がクライアントに対してどうすれば気持ちよく生活の一歩をふみだしてもらえるのか。またそのスタイルに共感してもらってしあわせになってもらえるのか。そういうイキイキと楽しく仕事をしている姿が本から伝わります。

<読みやすさ★★★★☆>

建築についての散文

建築はほほえむ

建築家であり、作家である松山巌さんの著書は、建築のことを書いた散文という表現がぴったりの作品です。これは建築に携わった人でないと書けないですし、文章で評価を得た人でないと書けないです。

本書は「あなたが好きだなと感じる場所を考えてみよう。あなたが気持ちのよいと感じる場所を考えてみよう」という問から始まり、建築とは何かを探っていく文章の流れとなっています。ここちよい文体にのった著者のもつ建築についてのメッセージを文章で感じてみてはいかがでしょうか?
<読みやすさ★★★★★>

建築作品集

建築家の作品集は高価で簡単に購入を踏ん切れるものではありません。でもお金を払ってでも手元においておきたい建築家の作品集というのものがいくつか存在します。

 今回のブログでは20205月時点で一般に出回って入手しやすいもの(絶版品はかなりの高額になってしまっていますので)をご紹介します。

ルイス・カーンの作品集

 設計行為に対し真摯に向き合った姿勢が密実にかたちとして表現されているルイス・カーンの建築。こちらの作品集では彼の住宅作品のみをとりあげたものとなっています。地味で派手さのない住宅ですが、そこには見れば見るほど奥深さがあり、多くの建築家が彼の作品に敬意を表していることを理解できるでしょう。時代に流されない建築に対する彼の信念には作品そのものから説得力を感じさせます。

 作品集の表紙を飾っているフィッシャー邸は、幾何学的なキューブ型の建築同士が斜めに重なりあう配置関係が奥深い住宅概念を語っている美しい住宅作品です。家を人が住まうための空間概念とするカーンの哲学が純粋にかたちとなって表現されています。

アルヴァ・アアルトの作品集

 アルヴァ・アアルトの建築は、純粋により空間のここちよさと住む人への愛情が空間として表現されていて、住空間をつくるお手本がつまっています。

 そのなかで私に大きな影響を与えたのがフィンランド西海岸郊外に位置する「マイレア邸」です。森と調和した静かで端正な佇まい、そしてその連続性を内部へと導くデザインは空間に豊かさを与え、建築の本来の意味や方向を示す愛情溢れる住宅です。

エリック・グンナール・アスプルンドの作品集

 モダン建築の巨匠エリック・グンナール・アスプルンドの作品集も是非持っておいてほしいうちのひとつです。彼の代表作のひとつであるストックホルム市立図書館の壮大な本棚のパノラマ写真は有名で、よくいろんな雑誌に登場しているので見たことのある人も多いでしょう。エントランスホールの360度本に囲まれた空間は圧巻です!

 作品集の表紙にある彼が生涯をかけて設計した「森の墓地」は、丘陵地と森を最大限に活用しながら建築と融合し、人間と自然とのふれあいが空間で表現されています。

静寂な中にあたたかさがひそむ自然との共生空間はただただ感動します。

川島 洋一(著) 吉村行雄(写真)

ピーター・ズントーの作品集

 この建築家の空間、素材の使い方、そして信頼をおく職人にしか施工させないストイックさは、建築マイスターと称したほうがよいでしょう。多くの建築家に彼がリスペクトされる理由がとてもわかる作品の数々です。本の装丁も作品とよく合っていて静謐な表情を作品とともに味わうことができます。

 彼の作品の中で特に私が感動したのはスイスの小さな村を世界的に有名にした温泉施設「テルメ・ヴァルス」です。小高い丘と同化して山々の風景に溶け込む建築の中には、自然石の積層からなる神秘的な洞窟のような空間が存在しています。

堀部安嗣の作品集

 日本人建築家堀部安嗣の作品集もご紹介したいと思います。彼の素材の直裁的な使い方、精緻なディテールによる凛とした空間は、建築家自身の表現を偏重するのではなく、従来の環境に溶け込む純粋なる建築の姿であります。

 作品集でとりあげられている「竹林寺納骨堂」は、人と自然が向き合い生と死をつなぐ静謐な建築空間が地元の確かな品質の素材と技術で表現されています。

 重厚な作品集で少々高い本でありますが、度々手にとる存在としてかたわらに置いています。

建築以外のデザイン本

建築以外のデザインの本からも多くの学ぶところがあります。デザイナーという職種の人たちが書く文章が読みやすく説明が上手です。この伝え方の巧みさによって建築家による文章がいかに読みにくいものであるかのがわかります。クライアントという仕事の発注者がいての私たちであり、彼らとそして利用するすべての人たちに丁寧にデザインというものを伝えなくてはいけないなということを実感させられる本の数々でした

ファンタジア

芸術家、発明家、教育家など様々な顔を持つイタリア人デザイナーが論じる本書では、「ファンタジア」という聞き慣れない言葉の定義からはじまります。そしてそれについての分類と分析がなされます。抽象論に終止せず事例をふまえながら説明され、多くの資料写真とともに記された言葉には著者の遊び心があふれています。「ファンタジア」を本書をとおして感じれば感じるほど、考えれば考えるほど限界が見えないものであるというのが私の感想です。だから何度でもこの本を読みたくなります。この本には無限の情報があるような気がしますね。何回も読んでそこにあふれる情報をつかみとってください。必ず読んだ人にとってそれは財産になるはずです。
<読みやすさ★★★★☆>

ブルーノ ムナーリ (著)  萱野 有美 (翻訳)

デザインのデザイン

私は最初この著書を読むまでは「デザイン」というものは造形または色彩等からなる表層的な部分でしかとらえてないことに気づかされましたね。この本では「デザイン」とは何かという禅問答のような問いに対し、多岐にわたる視点から真摯に答えています。デザインの歴史から持つ意味や意義について、または著書自身のプロジェクトによる具体例を織り交ぜながら語られるデザインは、まさに著書のタイトルに合致した内容であります。デザインという行為をどう言葉に変換し意識するかを考えさせられます。
<読みやすさ★★★★☆>

絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える

本書はイラストレーターであり、アートディレクター、デザイナーでもある著者が「どうすれば、わかりやすく伝えられるのか」についてを、自身のデザイン経験を用いながら解き明かしていく楽しい形式のものとなっています。著者が今まで体得してきたイラスト・デザイン技術の分析や思考方法、本の書評や本の装丁アイデアのケーススタディなど、内容は多種多彩で飽きることがありません。本でありながら著者自身のアイデアノートのようでもあり、それをのぞかせてもらえる体験はなかなか興味深い読書体験でありました。
<読みやすさ★★★★☆>

アイデアを得るための本

アイデアを得るためにみなさんはどんなことをこころがけてますでしょうか?私はご紹介する2冊の著書を読んだことで、これまで自分が行ってきたアイデアを生み出す行為というものをとらえなおす機会になりました。

アイデアを出せるようになるためは、とにかくアクションに起こして場数を踏んでいくことです。これらの著書は、経験の積み重ねで自然にアイデアを生み出せる意識づくりをうながす内容になっているのもすばらしいです。

本書を手にとってアイデアを出せる体づくりをすぐにでも始めましょう!

アイデアのつくり方

こちらの本は、アイデアを得るためにたどるステップについて書かれたものとなっています。

 「アイデアは既存要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」という原理からすすめられる文章は、とてもシンプルな言葉でまとめられたわかりやすい内容となっています。その組み合わせを導くための関連性をみつけ出すにはどうしたらいいか?その方法論言葉でとらえなおすことではっとさせられます。1時間もあれば読み通せる薄い本なのですが、アイデアを得るためのエッセンスが凝縮した内容になっています。

 でもこれら内容を知っただけではうまくいきません。自身が動いて実践することによって高められるものだからこそ、著者はおしげもなくこの内容を披露しているわけなんですね!

<読みやすさ★★★★★>

ジェームス W.ヤング(著)

 

アイデアのヒント

この著書ではおもにアイデアを得るための心構えについてを書いた本となっています。

 こちらの著書においてアイデアの定義

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

となっています。

 「アイデアのヒント」の著者は「アイデアのつくり方」をすでに読んでいて、そこからさらに本書を発展させていったわけなのです。

 この定義をもとに、アイデアを得るための心構えアイデアを考える際のアドバイスについてが述べられています。

普段は言葉にしていないアイデアを出すための行為が言葉にしてみるとたしかにそうだなというものがたくさんあり、アイデアを生む作業を行ううえで、勇気づけられるすばらしい内容となっています。

<読みやすさ★★★★★>

ジャック・フォスター(著)

その他のおすすめ本

陰翳礼讃

建築を学ぶものなら読んでおくべき本のひとつとされるこの本は、昭和の大文豪、谷崎潤一郎の傑作随筆です。

 私たちが普段日常で感じている明るさは、もはやあたりまえです。少しでも部屋が暗いと照明によって部屋の隅にある闇をも消そうと躍起になっています。谷崎先生は、その闇とぼんやりした光の中から生まれる陰影からなる美が素晴らしいと主張し、日本人はなぜ陰影から美を求めそして創造できたのかの考察を行っています。ぜひ本書を手にとって、先生の美しい文章と共に陰翳礼讃の世界観を味わってみてはいかがでしょうか。
<読みやすさ★★★☆☆>

日本文化私観

 本書は昭和を生きた気鋭の作家坂口安吾が、「伝統とは何か?」「日本人としての国民性とは何か?」を問いかけ、ユニークな文化論を展開する随筆作品です。谷崎先生は日本人の祖先が見つけた陰影から見出したものに美を感じているのに対し、安吾先生は、今の日本人にとっての生活における必要性や願いをなした形に美を感じ、それが日本人のもつ現代の文化なのだという逆の見解です。そのユニークな見解とはっきりした物言い、そしてそれを表現するユーモアあふれる文体は、過剰な論考までも面白く読ませる魅力があります。
<読みやすさ★★★☆☆>

茶の本

 茶道は日本の芸術や暮らしの作法に大きな影響をもたらしました。この本は明治時代、美術運動家であった岡倉天心が海外に茶道をとおして日本文化を紹介するために書いたものです。

本書では茶の発展や歴史からはじまり、禅との関わりや茶室による日本建築への影響などについてが論じられています。短い本ですが、そこには茶をとおした日本文化の神髄が語られています。茶の哲学をとおして著者の思想に触れ、日本文化を感じてみましょう!

<読みやすさ★★★☆☆>

風土

哲学者和辻哲郎による、風土とは何かという問いにこたえていく古典的名著で、他の建築書からもよく引用されている作品のひとつです。

本書は世界の地域をモンスーン、沙漠、牧場の3類型に分類してそれぞれの人間を取り巻く環境を「風土」と定義し、その文化や国、宗教、歴史などといった人間の生きるうえでの条件からアプローチし考察しています。その独特の観点による内容はやや難解ですが、何度も読んでいくとそこにこそ普遍性があることに気づくことができ、現在においても再読に値する本であると思います。

ただし最初のとりかかりとしては壮大な哲学的エッセイとして気楽に読んでみることをおすすめします。

<読みやすさ☆☆☆☆☆>

まとめ

いやあ、ついたくさんご紹介してしまいました!今回は建築やデザインに関しての本でしたが、それ以外にもみなさんに是非読んでほしい本がたくさんあります。また機会をもうけていきますので楽しみにしていてください!

こちらのブログでも読書を建築学生にはすすめてます!時間があるうちにたくさん読んでくださいね

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