レム・コールハース/OMAの建築作品7選|現代建築の巨匠が語る思想

今回は、オランダ出身の世界的建築家、レム・コールハース/OMAの作品の魅力に迫ります。彼の作品は、日本の40代の建築家をはじめ、多くの建築学生に大きな影響を与えてきました。

レム・コールハースの建築の最大の魅力は、その革新的な空間構成にあります。建築の中に「地形」のような空間を取り入れたり、安価な材料を効果的に活用したりするダイナミックな手法は、見る者を圧倒します。

それでは、彼の卓越した建築思想を理解するために、代表的な作品を私の個人的なセレクションとともにご紹介します。

レム・コールハースの建築作品の3つの魅力

彼の作品は、一見すると突飛な形態に見えますが、そこには明快なロジックが存在します。

  • 空間の概念を変える「地形」: 床や壁、天井といった建築の基本要素を再構築し、建築の中に地形や街路のような連続した空間を生み出します。
  • 安価な材料とダイナミックなデザイン: 工業製品などに使われる安価な材料をあえて仕上げに用いることで、これまでにないユニークな空間体験を提供します。
  • 卓越した思考と言葉: 建築家になる以前にジャーナリストや脚本家だった経験から、彼の建築思想は力強い言葉で語られ、その独自の世界観を伝えています。

OMA/レム・コールハースの代表作品7選

エデュカトリアム|空間と機能が一体化する地形


レム・コールハースの初期の代表作で、「Education(教育)」と「torium(工場)」を合わせた造語が由来です。

この建築の最大の特徴は、一枚の床スラブが、時には水平に、時には傾斜して、壁や天井、そして通路へと形を変えながら空間を構成している点です。これにより、部屋と通路が一体となった、ひとつながりの連続的な空間が生まれています。まるで建物の中に地形が存在するかのような構成は、海を干拓して生まれた平坦なオランダの風土が影響しているのかもしれません。

クンストハル|スロープと素材で都市を表現


この美術館も初期の代表作で、現代建築のアイコンとして知られています。

来館者は、建物を貫くスロープを通り、流れるように7つの展示室に導かれます。この斜めの床は、階の概念を曖昧にし、連続的な空間体験を可能にしています。また、美術館では珍しいグレーチングやポリカーボネートといった安価な材料を仕上げに使用し、都市の中に美術品が置かれているかのようなユニークな感覚を表現しています。

ボルドーの家|「動く部屋」が生活を変える


フランスの丘に建つこの住宅は、車椅子生活を送るクライアントのために設計されました。特徴は、各階を上下に移動する**「動く部屋」**のようなエレベーターです。

建築家は、単なる移動手段だったエレベーターを、生活空間の一部として扱いました。車椅子に座ったままでも本棚に手が届くように、各階の床にぴったりと止まるこの空間は、施主とその家族の生活に変化をもたらす仕掛けとして機能しています。

ネクサスワールド|高密度な集合住宅の現代化


日本の集合住宅「ネクサスワールド」の一角を設計した作品です。

山並みのようにうねった屋根の造形が特徴で、道路に面した壁は緩やかに波打っています。住戸は3層のメゾネットタイプで、光や風を取り込む中庭が、各部屋に開放感を与えています。日本の伝統的な長屋文化を、現代の多層集合住宅として再解釈した挑戦的な作品です。

在ベルリン・オランダ大使館|建物の中に「街路」を


この大使館の大きな特徴は、廊下や階段、スロープなどの動線空間が建物全体を貫き、複雑に絡み合いながら構成されている点です。

この一本の動線は、まるで都市の中を歩く街路のように機能し、外部からも内部の人々の動きが見えます。限られた空間の中で、人々がコミュニケーションを誘発するような立体的な「街」をつくり出そうとした、コールハースらしい実験的な試みです。

シアトル中央図書館|機能で空間を積層する

この多面体の結晶のようなユニークな建物は、新しい時代の図書館のあり方を提案しました。

コールハースは、時代が変わっても変わらない「固定された機能(図書保存など)」と、変化していく「流動的な機能(閲覧、情報収集など)」を分析。それらを垂直方向に積み重ね、互いに干渉しないように構成することで、将来の役割の変化にも対応できる空間をつくり出したのです。

カーサ・ダ・ムジカ|音楽を街に開放する


ポルトの歴史的な街並みの中に立つ、鉱石のような多面体フォルムの音楽ホールです。

この建築は、中央のホールを囲むように空間をくりぬき、ホワイエやレストランなどの補助機能を配置しています。来館者は、立体的な動線を回遊しながら、窓を通して都市やホールの内部を垣間見ることができます。施設の内と外を大胆に関係づけることで、コンサートホールという閉じた空間をより多くの人々に開かれたものにしています。

まとめ:なぜレム・コールハースの建築は時代を超えて魅力的か?

レム・コールハースは、一見突飛な形態の建築を、**「空間の再構成」**という明確な論理で表現してきました。

彼は、用途や機能といった「プログラム」を重視し、それらを大胆に組み合わせることで、これまでにない状況や体験を建築で生み出します。そして、その卓越した思考は力強い言葉で語られ、建築の新しい可能性を私たちに示唆し続けているのです。

彼の作品は、単なる造形だけでなく、その背景にある深い思考を読み解くことで、より一層その魅力が理解できるでしょう。

参考資料:a+u2004年2月号:a+u OMA、a+u 2005年1月号、GA03 LIBRARY

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