2020年の建築士法改正は、建築士不足を解消するための国の施策であり、これから多くの若者が若くして建築士資格を取得する道が開かれました。
これは、一見すると若者側のメリットに思えますが、実は企業や設計事務所にとっても、採用活動を根本から見直す大きなチャンスです。私はそのカギが建築士の予備校にあると考えています。今回は、その新たな可能性について、建築士の予備校という場に身を置いた経験がある私自身の経験も踏まえながらお話しします。
↓建築士法改正の全体像についてはこちらで詳しく解説しています
なぜ予備校が「人材の宝庫」になるのか
建築士法改正以前以後に限らず、建築士資格を取得するためには、予備校に通うのがもはや一般的です。法改正により、建築学生のうちから予備校に通う人がさらに増えるでしょう。
これにより、企業の採用担当者は予備校を眺めるだけで、高い確率で**「やる気があり、将来建築士になる可能性が高い人材」**を見つけることができるようになります。
採用担当者にとって、面接やポートフォリオだけでは見抜くことが難しい「やる気」や「地頭の良さ」を、予備校の在籍状況や成績という形で確認できるのは大きなメリットです。
予備校講師は最高の「スカウトマン」
予備校の講師の多くは、現役の建築士や大学の先生です。彼らは授業を通じて生徒一人ひとりの能力を深く把握しています。
私の先輩で、予備校の製図講師をしている方がいらっしゃいました。彼は授業を通じて見つけた優秀な生徒を自分の事務所に誘い、その生徒は無事建築士に合格し、今では採用され優秀な人材として活躍しています。
これは小さな事務所での一例ですが、企業が予備校の講師と連携し、優秀な生徒を青田買いする新しい採用戦略が、今後生まれてくるかもしれません。

建築士法改正後、資格こそ「能力の定量的な判断材料」
企業が採用したいのは、建築士になる可能性が高い人材です。企業にとって、一級建築士の数はプロポーザルなど仕事の受注に直結する重要な数値だからです。
予備校での学科や製図の成績は、その個人の「学習能力」や「思考力」を測る客観的な指標となります。また、予備校に通って時間やお金をかけてでも資格取得を目指すという姿勢は、何にも勝る「仕事へのやる気」の証明です。
建築士法改正により、これから多くの若い建築士が誕生します。これからの時代、企業や設計事務所は、そうしたやる気と能力を持った若い才能を、積極的に発掘し採用する努力が求められるでしょう。