建築学科で学ぶ学生にとって、卒業設計は特別なものです。ただの課題ではなく、将来の自分を形づくる大切な「第一歩」。だからこそ、私は真剣に、そして正直に、伝えたいことがあります。
この記事では、かつてあなたと同じ道を歩んだOBとして、卒業設計の進め方と、期限が迫ってきたときの具体的なまとめ方についてアドバイスします。
卒業設計の「時間」を設計する

卒業設計の成功は、適切なスケジューリングにかかっています。
まず、全体像を把握しよう
大学の設計課題が1〜2ヶ月だったのに対し、卒業設計は、その3〜5倍の期間が必要だと考えてください。提出が1〜2月だとすれば、夏休み頃から本格的にスタートするのが理想です。
準備は早めに始めよう
就職活動や大学院入試、アルバイトなど、学生生活は多忙です。本格的に取り組む前の段階で、最低限、以下の準備をしておきましょう。
テーマと敷地の候補を絞る: この大枠は、すぐに決まるものではありません。いくつかの候補を試しながら、早めに方向性を固めておきましょう。
使用するソフトの習熟: CADやプレゼンソフトは、表現の基礎となるツールです。やりたい表現が技術不足でできない、という事態を避けるために、早めに操作に慣れておきましょう。
常に「アウトプット」を意識する

素晴らしいアイデアがあっても、それを形にできなければ意味がありません。
日々の訓練が、自分を助けてくれる
コンペや課題を活用して、アイデアをまとめ、表現する練習を繰り返しましょう。日頃から、思いついたアイデアはこまめにメモしておくことも重要です。その積み重ねが、いざ本番でアイデアに詰まったときの助けになります。
期限から逆算して「まとめ方」を決める
提出間近になってから慌てないために、事前の準備が重要です。
制作にかかる時間を計算する
設計図や模型、パースなど、制作に必要な時間を正確に計算しましょう。一人でどのくらいの時間がかかるか、誰かに手伝ってもらえばどのくらい短縮できるか、具体的にシミュレーションしてください。
見切りをつける訓練をしよう
設計に「これで完璧」という終着点はありません。社会に出れば、契約期間という明確な期限があります。学生のうちに、**「どこまでやれば納得のいくクオリティになるか」**という自分なりの線引きを見つける訓練をしましょう。
図面として成立し、小さなスタディ模型で確認できたら、もうプレゼン準備に移行していい時期かもしれません。
提出物の「伝わり方」を追求する
アイデアを最大限に伝えるための工夫が、作品の評価を左右します。
先にレイアウトを考える
いきなり制作に取りかかるのではなく、先に提出図書のレイアウトを検討しましょう。最も見せたいパースや模型写真の大きさを最初に決めることで、全体のバランスがよくなり、制作作業の効率も上がります。
これは、プロとして仕事をするようになってからも、コンペやプレゼン資料を作成する際の基本的なスタイルです。
文章はこまめに書いておく
文章は、設計の意図を伝える上で欠かせません。しかし、提出直前は、時間も精神的な余裕もなくなってしまいがちです。焦って書くと、支離滅裂な文章になってしまいます。
日頃から、発表原稿を想定して少しずつ文章を書きためておきましょう。シンプルに、伝わる言葉で書くことを意識してください。
まとめ:卒業設計は、ゴールではなく「スタート」
このアドバイスは、少し厳しく聞こえるかもしれません。しかし、学生のうちに「期限」を設定して行動する訓練は、社会に出てから必ず役に立ちます。
徹夜は最後の追い込み以外は避け、体調を崩さないように。そして何より、一人で抱え込まず、友人や先生、先輩など、周囲の力を借りることを恐れないでください。
卒業設計は、ゴールではなく、あなたがプロとして歩み始めるための最高のスタートラインです。悔いのないよう、全力で取り組んでください。