建築の設計図を描いていくと、基本設計からはじまり実施設計と段階を上がっていくにつれ、その図面の密度が上がっていきます。
そこで新人がぶちあたるのが実施図面、さらには拡大された詳細図面ではないでしょうか。上司などからの図面なおしの手伝いからそれは始まっていくことでしょう。私は図面を渡されて詳細図をはじめてまじまじと見たとき、頭が痛くなりました。細かすぎて、もうたいへん。。。
もちろん何を描いているかはなんとなくはわかるんです。でも、それらが意図することがなかなか理解できない。じーと図面を見ていても、なるほどなるほどというふうにはすぐになっていかないのです。もちろん理解できないから、自分で考えて描くことなどできない。
建築詳細図は検討すればするほど建物が納まっていくのだ!
設計をすすめていくにあたって、間取り程度の基本設計の図面から、見積もりをとるため、そしてどうつくっていくかというための実施設計図面が必要になってきます。縮尺も大きくなっていき、平面や断面の詳細が見えてきます。さらにはすすめていくと、サッシ、家具、階段、手すりなど、どんどん部分に関する検討、そしてうまくおさまってないのであればその解決が必要になってきます。
より細かく図面で指示をしていくと、自分が思い描いている空間ができてくるわけです。
ディテール図面を読めるようになった私のプロセス
現場を良く見てそれから詳細図面と照らし合わせる
私は現場でつくっているそのものを見て、そして図面に戻るという作業を繰り返し行いました。どうなっているかが視覚的に確認しないと、図面でイメージができません。自分が上司の手伝いで描いた図面が現場でどう納まっているかで、自分の描いた線の意味がはじめて理解できた瞬間、
と声を出してしまいました。そしてまた手伝いで詳細図の修正などの手伝いをすると自分で描いていて納得ができるんです。
詳細図を描いて真似ながら提案し、そしてダメだしされる
ある程度図面が読めるようになってきて、自分の担当部分みたいなものができると、そこではじめて提案をさせてもらうことができました。とはいってもゼロからはまだ提案することができなかったので、先輩の図面を真似しながら描き、それをボス、または施工者である監督さんや大工さんに見せ、確認してもらいました。そしてその内容にダメだしされ、おこられ、文句を言われる。その繰り返しによって、目や頭で覚えていくのでなくて体で感じていくようになりました。
図面を見て3次元をイメージする
これは何も、詳細図だけに言えることではなく、すべての図面を見るときに言えるものです。図面を一面的に見ない。そういうことをボスは私に口が酸っぱくなるほど言っていました。たしかにそういう視点で見ると、部材同士がどういうふうにぶつかりあって建築の部分を構成しているかがよくわかります。それを常にこころがけました。
建築詳細図から設計事務所の考え方がわかる!
建築の資料では、詳細図をまとめた、いわゆるディテール集が建築家や著名な設計事務所が出版しています。ディテールを理解しつつあったあのころの私は、本屋であったり勤め先のディテール集を読むようになりました。たくさん読んでいると、やはり設計事務所によって階段、サッシまわりなどひとつとっても違いがあります。
「こんなんでいいの?」というのもあれば「これは泣かすディテールだ!」と感心するものまで様々なんですよ。
あんなに見ていると頭が痛くなっていた図面が、上記のプロセスのおかげで見ていてなるほどなるほど良く考えているなと読んでいてほんとテンションがあがりますし、自分のアイデアの引き出しとしてメモしたりもするようになりましたね!
建築ディテール集に潜んだ罠?以前の上司から聞いた都市伝説
建築の業界にもいろいろ都市伝説めいた話があります。そのなかで、以前昔勤めていた会社のボスから聞いた、建築ディテール集に関するちょっとこわい都市伝説をここに書いてみたいと思います。
それは私がまだ会社勤めの建築士であったときの資料室にてのお話
さて、昼休み、会社の資料室でおにぎりを食べながら、ディテール集を読んでいると、ドアがかちゃっと開いて、当時のボスが部屋に入ってきました。そのとき話していたボスの都市伝説がとても印象的で、今も覚えています。
ボスの修行時代に起きたという都市伝説
それはボスがまだ独立前に師の設計事務所で働いていたときのことです。ボスがひさしぶりに大学の同級生であった人物Aさん(仮名)とお酒を飲みに行くときがありました。Aさんはとある名のある設計事務所につとめておりまして、美術館を当時担当させてもらっていたそうです。
そのとき彼はちょうど階段の詳細を検討していました。最初Aさんは事務所のこれまでの図面を参照しながら、検討していたのですが、どれもぴんとくるものではなく悩んでいたそうです。そこでボスはいくつか自分の好きな建築家の作品をあげ、そのディテール集が一般に書籍となっているからそれも参考にしてみたらいい、とアドバイスしたそうです。
Aさんはなるほどとその話を参考にいくつかあるディテール集を読みあさり、ある作品の階段詳細をそのまま図面に描かれたとおり使用してしまったそうです。その後、彼の提案した階段が落下事故を起こし、負傷者がでてしまったのです。
この出来事の裏話としては、Aさんがそのまま図面内容を使用してしまったディテール集、実はその設計事務所はほんとうは出版に乗り気ではなかったそうです。自分らの手打ちをわざわざ外に発信するなんて、と思っていたのでしょうね。そこで彼らは図面にいたずらをしたわけです。そのままパクるような奴には天罰が下るようにと。信じるか信じないかは、あなた次第!(なんてフレーズありましたねww)
まとめ
いかがでしょう。実務的な話も上記のような都市伝説をはさむと少しは学生さんであればイメージがわいてくるでしょうか?すでに社会人として建築実務に携わっているかたなら、そうそうと共感してくれる部分もあったかなと思います。建築は奥が深い。勉強しても勉強しても次から次と学ばなければいけないことがあらわれる。それが面白いのかもしれません。特にこういう詳細図の検討なんていくらでもやろうとすればできると思いますね。