一級建築士事務所開業マニュアル:独立までの費用・準備・必須手続きを徹底解説

いつの時代も、自分の理想とする建築を実現したいという強い意気込みを持つ独立希望者は後を絶ちません。私もその一人でした。その強く熱い意気込みや勇気ある行動には、心からエールを送りたいと思います。

一級建築士事務所イメージ

しかし、建築士事務所の設立・起業は、**「建築士事務所登録」という法的ハードル、「初期投資」という資金的なハードル、そして「仕事の安定的な獲得」**という実務的なハードルが存在します。

そこで今回は、筆者自身の独立経験に基づき、建築士事務所(設計事務所)を立ち上げるために最低限必要な準備、手続き、初期費用の目安を、具体的なマニュアル形式で徹底解説します。


独立の覚悟:自分を信じて試してみる勇気

まずはこれ!これから事務所を立ち上げようとしている人、少し耳の痛い話かもしれません。

独立をしようとしている人に対して、会社に残る人たちはみな「この景気のなかでなんで独立しようと思ったかね」といったことを言いますし、思っています。この意見、自分でも半分はわかります。でも独立したい人はとにかくやって試してみたいという気持ちが強いわけです。

うまくいく場合もありますからね。もしうまくいかなかったら、また勤めればいいんです。**やってみたいと思ったことはやっておいたほうがいいです。**もしだめでも納得して次の人生に力を入れることができるはずです。反対に、誰かに反対されて、やめようかなと思ったならやめておいたほうがいいです。高い確率で失敗します。

ある程度の勘違いを信じてやってみることができるかどうかなんだと思います。


設立の法的ステップ:事務所登録と管理建築士

建築士事務所を開設し、他人の設計を受けて報酬を得るためには、建築士法に基づき、**「建築士事務所の登録」**が義務付けられています。この登録がなければ、実質的に設計業務を行うことはできません。

大前提となる「管理建築士」の要件

事務所登録を行うためには、必ず事務所ごとに**「管理建築士」**を置かなければなりません。これは、あなたが代表者として事務所を運営する場合でも例外ではありません。

要件詳細注意点
資格一級建築士、二級建築士、または木造建築士であること。業務の範囲は資格の種類に依存します。
実務経験建築士登録後、3年以上の設計等業務の実務経験を有すること。**「建築士として登録した日」**からのカウントです。
講習国土交通大臣の登録を受けた機関が行う**「管理建築士講習」**を受講し、修了証を取得すること。この講習は、建築士の**「定期講習」**とは別のものです。一度修了すれば更新制ではありません。個人的には管理建築士も更新性にするべきなのではないかなと思ったりしますね。

【余談】 管理建築士でないと他人から設計を受けて報酬を得ることはできませんが、ちょっとしたインテリアのデザインなどであれば、建築士事務所でなくとも受けることはできます。個人的にはこういう部分も管理建築士でないとできないようにしたほうがいいような気もするのですがね。

建築士事務所登録の具体的な流れと費用目安

管理建築士の要件を満たしたら、いよいよ事務所の所在地を管轄する都道府県の建築士事務所協会または**自治体(都道府県庁)**に登録申請を行います。

項目詳細な手続き費用目安(初期)
申請先事務所所在地の都道府県知事
登録手数料新規登録の場合に必要となる手数料。15,000円〜20,000円程度(都道府県により異なる)
準備書類登録申請書、管理建築士講習修了証、誓約書、業務経歴書など。書類は複雑なため、申請先のホームページで確認が必須です。ここの事務的に必要な手続きはとくに問題なくすんなりできるかと思います。

Google スプレッドシートにエクスポート

【実務的なアドバイス】 事務所登録が完了するまでには、申請から概ね1ヶ月から1.5ヶ月を要します。この期間を見越して、開業のスケジュールを逆算することが重要です。


独立開業の準備:誰と、どこで、何を使うか?

事務所登録手続きと並行して進めるべき、具体的な準備について解説します。

パートナーシップの検討

最初に建築設計事務所を始めるにあたって、一人でやるか、だれかとタッグを組んで行うかという選択肢がでてくると思います。

パートナーイメージ

基本は一人でやってみてほしいなというのが私個人の見解です。何でもやってみたい、自分一人の力でどこまでできるか試してみたいという人は是非とも最初は一人でチャレンジしてみてください。

もし誰かとパートナーシップをとって行うのであれば、できれば役割が分かれているほうがいいですよね。たとえば一人は営業的な部分を受け持って仕事をとってくるタイプ。そしてもう一人は技術に特化したタイプ。そうすることでうまく仕事がまわっていく感じがします。

事務所スペースの確保

自宅を事務所がわりに使用するという人もいらっしゃると思いますが、自宅兼オフィスとしてしっかりオフィス空間がないのであればそういうのはおすすめしないですね。クライアントを招いてもてなす空間を小さくとももっているとそれがしっかり自分をうつすものとなります。

ちなみに私はスタートアップ時は資金も慎重に考えていたのでシェアオフィスの小さな部屋を借りて活動していました。その後、自分でオフィスを設計できる機会に恵まれたので、その場所にうつって現在は活動しています。

必須の設計機材と初期費用

図面を作成し、クライアントに提示するために必要な機材を揃えましょう。

① パソコンとCADソフト

図面作成用としてパソコンは必要になります。もちろん図面を描くうえで必要なCADソフトも用意しなくてはいけません。CADについては自分が一番作業しやすいものが一番いいと思いますよ。

↓CADについて記事も書いています (ここにCADに関する記事へのリンクが入ります)

② プリンター(プロッター)

図面を描く以上、今の時代においてはそれを紙媒体にしなくてはいけません。上記のパソコンにあわせてプリンターは必要になってくるでしょう。

仕事を受ける建物の規模によってきますが、小規模の建物が主戦場であればA3プリンター程度で十分です。中規模、大規模な建物も扱うのであれば、A2、A1くらいの図面はあたりまえに必要になってきますので、少し高くなりますがプロッターを購入しましょう。


独立後の生命線:仕事の獲得戦略

これが一番大事です。目先の仕事がある段階でないと独立はきついです。いきなり仕事が舞い込んでくるほど甘くはありません。

最低限の案件ストックの必要性

一人でやるとしても少なくとも3~4件くらいは見通しがある段階で独立していかないとまわっていかないと思いますね。ただでさえ建築設計の仕事というのは、ぽっと入ってきては立ち消えるということが多いです。

私でさえも3件くらいは見通しがあった段階で独立しましたが、途中で2件ぽしゃってしまい、営業も頑張らなくてはいけないというかたちになってかなり苦労をしました。建築設計の営業は実作のストックがないとかなり苦戦しますからね。

マネタイズの多様化

設計以外の建築に関わることで、どういうことがマネタイズできるのかも時代を読みながら行動していってみてはいかがでしょうか。その行動が後々の自分を助けることになるかもしれません。


独立の心構え:熱意が道を開く

準備ができましたら、最寄の建築士事務所協会に事務所登録をしにいきましょう。

私のほうから言えることは、とにかくやってみて、自分の力を試してみてください。必死にやっていると何かが見えてきます。**最初のうちはとにかく自分を暇にしないでください。**始まりのスタートダッシュが半年後、1年後の自分をつくりますから。

では自分の力でお金を稼ぐという醍醐味を味わって人生を楽しんでみてください。健闘を祈ります!!

↓設計事務所の営業や仕事獲得パターンに関する記事も書いています!

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