建築学科研究室の選び方完全ガイド:系統別の就職先と失敗しない3つの視点

大学4年生を迎え、研究室(ゼミ)選びという大きな決断が迫っている皆さん。就職活動もあり、忙しいとは思いますが、今後のキャリアを左右する重要な選択です。4年間の集大成として卒業研究に心置きなく取り組めるよう、この機会にしっかり検討しましょう。

今回は、大学の建築学科を卒業した私の経験も踏まえ、研究室選びのポイントと、各研究室の特徴を徹底的に解説します。この記事が、あなたの未来を切り拓くためのヒントになれば幸いです。


 

研究室決定までの一般的な流れと時期

 

研究室の所属先は、大学や学部によって時期や方法が異なりますが、一般的な流れは以下のようになります。

  1. 所属先候補の決定(書類提出)

  2. 教官との面接

  3. 所属研究室の決定

  4. 研究室の活動及び卒業研究へ

【一般的なスケジュール例】 早い大学では3年生のうちに所属先が決定します。4年生の春に書類を提出し、ゴールデンウィーク前後に面接、連休明けに決定というケースが多いです。大学の連絡事項をきちんと確認し、早めに行動を開始しましょう。


 

研究室の系統別特徴と就職先

 

建築には設計以外にも、さまざまな分野があることに気づいたことかと思います。研究室に所属を決めることは、自分がどんな分野に向いているかを今一度考えるいい機会です。

 

1. 意匠・計画系

 

  • 特徴: 建築のデザインや、都市の計画的な視点で研究します。指導教官が現役の建築家であることも多く、コンペや先生の仕事への提案を通して実践的に学べます。

  • 就職先: 設計事務所、組織設計事務所、ゼネコンやハウスメーカーの設計部など、主に設計に関わる仕事に就く人が多いです。自分で設計事務所を立ち上げて活躍する人もこの系統の出身者が多い傾向にあります。

 

2. 構造系

 

  • 特徴: 建築物の構造や力学について深く探求します。耐震、構造解析、木造など、専門分野は多岐にわたります。工学系の建築学科では複数の研究室があるはずです。

  • 就職先: 構造設計事務所、ゼネコンの構造部など、構造設計に携わる人が多いです。

 

3. 環境・設備系

 

  • 特徴: 光、音、熱、空気、水など、快適で安全な空間をつくるための研究を行います。エネルギー問題にも関連するため、建築の枠を越えて工学系企業などと連携することもあります。

  • 就職先: 設備設計事務所、ゼネコンの設備設計部、環境評価機関などに進む人が多いです。

 

4. 材料系

 

  • 特徴: 木材、コンクリート、鋼材などの建築材料を扱い、その性質や建築技術について研究します。データを取るための実験を伴うことも多いです。

  • 就職先: 施工管理(現場監督)、建材メーカー、建築関連商品の開発や営業など、幅広い分野に就職します。

 

5. 都市計画・まちづくり系

 

  • 特徴: 対象が単体の建築物ではなく、都市やまちという大きな単位で研究を行います。フィールドワークや地域の人々とのワークショップを通じて、街並みや防災都市、中心市街地の活性化など、多岐にわたる課題に取り組みます。

  • 就職先: 都市計画事務所、組織設計・ゼネコンの都市計画部、自治体の公務員などに進む人が多いです。

 

6. 歴史系

 

  • 特徴: 建築や都市がどのように形づくられたのか、その歴史を探求します。歴史的建造物の保存や民家の調査、建築評論や思想の研究もテーマになります。

  • 就職先: 就職先は多岐にわたりますが、建築に関する出版社やメディア関係に進む人もいます。建築史で生計を立てるのは難しい側面もあります。

 

7. 建築構法・生産系

 

  • 特徴: 建築物の作り方や、そのプロセスに関わる生産・マネジメントをテーマとします。既存建物の再生技術や、持続可能な社会に求められる建築のあり方について研究しているところもあります。

  • 就職先: 施工管理(現場監督)、建築企業の研究開発、建築プロデュース会社、プロジェクトマネジメント会社など、多岐にわたります。


 

研究室選びで重視すべき3つの視点

 

研究室の分野だけでなく、指導教官との相性もあなたの成長に大きく関わります。以下の3つの視点をもって、最適な選択をしてください。

 

1. 教官の「人間性」

 

あなたが尊敬したり、面白いと感じる教官の研究室を選ぶべきです。大学教授は研究者であると同時に教育者でもあります。学生一人ひとりと向き合ってくれるか、その人間性にも着目して選びましょう。

 

2. あなたの「可能性」を評価してくれるか

 

「評価されるから伸びる」という側面は、間違いなくあります。あなたの話に耳を傾け、可能性を見出し、きちんと評価してくれる教官を選びましょう。相性が合わないと時間の無駄になるだけでなく、自身の成長を妨げることにもなりかねません。

 

3. 外部に開かれた研究室か

 

外部の企業や他大学と積極的に連携している研究室は、多くの経験と刺激を得る機会になります。産・官・学連携や外部とのコラボレーションを通じて、より広い視野を身につけることができるでしょう。

 

大学ごとの決定方法の違い

 

研究室の所属決定方法は大学によって様々です。友人や先輩に話を聞いてみましょう。

  • 成績順: 最も公平な方法です。日頃の努力が報われます。

  • 選考・面接: 第一志望から第三志望までを提出し、面接を経て決定します。

  • 人数制限なし: 自由に選べますが、人気研究室に人が集まり、十分な指導を受けられない場合もあります。

  • 抽選やじゃんけん: ごく稀ですが、友人同士で話し合って、じゃんけんで決めたという話を聞いたことがあります。負けて泣いてしまった学生もいたほど、学生生活の集大成として、誰もが希望の研究室に行きたいと願っています。

 

面接で熱意を伝えるための準備

 

研究室の所属にあたって、通常は担当教官との面接が行われます。就職の面接ほど堅苦しくはありませんが、あなたの熱意を伝えるための準備をしておきましょう。

  • ポートフォリオ: これまでの設計課題やコンペ作品などをまとめたポートフォリオは、あなたのスキルをアピールする有効な手段です。論文志望の学生も、興味のある先生の授業レポートなどをまとめておくと、話のきっかけになります。

↓ポートフォリオのまとめ方に関する記事はこちら!

  • 卒業研究のアイデア: 口頭で話すだけでなく、簡単なものでも良いので企画書をつくっておくと、より具体的に話を進めることができます。やる気の度合いも伝わりやすくなります。

  • 進路についての相談: ポートフォリオや研究内容を軸に進路相談をしてみるのも良いでしょう。思わぬアドバイスをもらえたり、行きたい会社にいる卒業生を紹介してもらえる可能性もゼロではありません。

 

まとめ

 

研究室選びは、建築という道へ進むと決めたあなたが、次に直面する大きな選択肢です。

建築は常に時代と社会の背景によって変化し、仕事の枠組みも多様化しています。だからこそ、自分の興味を掘り下げ、信頼できる教官のもとで、広い視野を身につけることが大切です。

ぜひ、自分の感性を信じて、未来を描いてみてください。

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