一級建築士の学科免除期間が延長された新制度。これは受験生にとって、合格への学習計画を大きく見直すチャンスです。自分の時間とお金を有効に使い、最短ルートで合格を目指すには、戦略的な準備が欠かせません。

今回は、現役一級建築士である私が受験生だったとしたら、どのような計画を立てるかという視点で、学習計画のパターンを提案します。あくまで一つの参考として、ご自身の状況と照らし合わせながら、最適な戦略を見つけてください。
学科試験の学習計画
学科試験に関しては、新制度で受験資格が緩和されたものの、学習方法の基本は変わりません。合格への第一歩として、まずは学習習慣を確立することが重要です。
予備校を活用して学習方法を身につける
独学でも合格する優秀な方もいますが、まずは予備校に通って、効率的な勉強法を確立することをおすすめします。試験勉強の習慣がない人にとって、予備校は強制的に学習モードを作り出す良いきっかけになります。
【ポイント】
- 初受験: 予備校の講座を受講して、学習のペースと方法を身につけましょう。
- 再受験: もし一度不合格になってしまった場合でも、勉強方法を確立できているなら、翌年は予備校の講座は受けずに独学で進めるのが効果的です。金銭的な負担を減らすだけでなく、自分のペースで弱点克服に集中できます。
製図試験の学習計画
新制度で学科免除期間が延長されたことで、製図試験へのアプローチは大きく変わりました。特に、1年目に製図試験を受けるかどうかは、慎重な判断が必要です。
免除期間を活かすか?1年目でストレート合格を狙うか?
以下の項目に当てはまるかどうかが、判断の分かれ目になります。
1年目での受験を見送る判断材料
- 本業が建築設計ではない: 建築設計を本業としていない場合、学科試験合格後から製図試験までの約2ヶ月半で合格レベルに達するのは、相当な努力が必要です。
- 仕事が忙しく、勉強時間が確保できない: 会社に十分な配慮がない、または担当プロジェクトが繁忙期で、まとまった学習時間が取れない場合は、無理せず免除期間を活用する方が賢明です。
- 作図スピードが遅い: 作図に5〜6時間以上かかってしまうようでは、エスキスや見直しに充てる時間がなくなってしまいます。製図のスピードが3時間台に収まらないようであれば、1年目の受験は見送ることを検討しましょう。
1年目でストレート合格を狙う判断材料
- 建築設計が本業である: 設計を本業とする方は、実務で培った経験やプライドが、勉強のモチベーションになります。そのままの勢いで受験に臨むことで、モチベーションを維持しやすいでしょう。
- 学科試験勉強からの勢いがある:一発合格を狙ううえで、学科合格からの勢いというものが大切です。勢いからくるモチベーションを冷ますことなく突き進みたい方は迷うことなく製図試験を受験してください!
製図試験を1年目に見送った場合の学習法
免除期間を活用して、翌年の製図試験に備える場合は、以下の項目を重点的に学習しましょう。
- 作図スピードの向上: とにかく数をこなして、作図のコツを身につけます。作図中に気づいたことをメモに残し、自分なりの方法論を確立することがスピードアップにつながります。
- 課題文の読解力: 課題文の独特な言い回しや構成パターンに慣れるため、繰り返し読み込む練習をしましょう。重要な箇所に線を引くルールを決めておくことも有効です。
- エスキスの基本プロセス: エスキスは製図試験の要です。問題を解きながら、または解答から思考プロセスを逆算しながら、基本を体に染み込ませましょう。
- 法規知識の徹底: 面積や道路斜線、防火など、製図試験で必須となる法規知識を完璧に理解しておきましょう。合格レベルの図面は、確認申請がスムーズに通るレベルである必要があります。
予備校はいつ利用する?
お金や時間に限りがある中で、予備校をどこで活用するかが合格への鍵になります。私が考える最適な予備校の使い方は以下の2つです。
- 学科試験は、初受験時のみ講座に通う。
- 学習習慣がない場合は、予備校を利用して勉強法を確立します。一度学習法を身につければ、不合格の場合でも翌年は独学で十分対応できます。
- 製図試験は、課題発表後の短期講座に通う。
- 製図試験を1年目に見送る場合は、それまで独学で基礎固めを進めます。そして、本番の出題傾向やエスキスのポイントをつかむために、課題発表後に短期の講座を利用しましょう。
これら2つの講座をうまく利用すれば、独学と予備校のメリットを最大限に活かし、合格の可能性を高めることができます。
まとめ
新制度は、受験生一人ひとりの状況に合わせて、最適な学習計画を立てる自由を与えてくれました。
- 仕事が忙しい方や設計を本業としない方: 1年目は免除期間を活用し、じっくりと製図の基礎を固めるのがおすすめです。
- 設計に自信がある方: ストレート合格を目指し、一気に走り抜ける戦略も良いでしょう。
重要なのは、自分の特性や状況を正しく理解することです。一年待つことが、合格への最短ルートになる場合もあります。あなたの状況に合った戦略を立てて、合格を掴み取ってください。