前回のブログでは設計関係の職種の会社等の採用を受けるためのポートフォリオの作り方などをアドバイスさせてもらいました。
そして今回は、それをもって受ける相手、つまり設計事務所をはじめとする会社がいったいどんな設計人材を求めているのかをお伝えしたいと思います。
実は、私、就職のため、面接を受けたことはもちろん、反対に就職の面接官も当時勤めていた社長の補佐的な役割として行ったことがありました。
そこで就職希望者を見させていただき、経験を通して実践したことや考えたことを書いていきたいと思いますので、ぜひ参考にしていただければと。
どんな設計人材が必要とされているか?
どんな人材をほしいか、いきなり私個人の意見で申し訳ないのですが、「建築が好きな人」「建築をつくることに熱意を注げる人」「バランス感覚のある人」、この3つをあげたいと思います。
建築が好きな人
建築を一からつくるということはなかなか大変な作業です。楽しいことばかりではできません。でも建築が好きであれば努力を続けることができるしがんばれます。以前大きな老舗設計事務所の専務さんとお話したことがあったのですが、彼もまず第一に建築が好きな人が欲しい!ということをおっしゃっていました。
建築をつくることに熱意を注げる人
1つ目の建築が好きな人と何が違うのか、そう思われる方もいるかもしれません。建築が好きな人がつくることも好きであるかというと、実際にはそうではない場合もあります。建築をつくることに喜びをもち、熱意、もっというと愛情をもってくれる人というのが作り手としての必要条件なのではないでしょうか。仕事をしていて、どこか人ごとのように与えられた仕事をこなす人、私はこういう人を働いてきて何人か見てきました。
クライアントとしてはそういう人に自分の財産を投じて仕事を託すことができるか?いやできないでしょう。
バランス感覚のある人
このバランス感覚がいいとはどういうことかというと、まんべんなくできる人、という意味です。設計作業でいうと、図面を描いたり、模型をつくったり、書類を作成したり、会話をしたり、などが平均的にできる人ということですかね。
設計はサービス業であり、人と人との関係で生まれる仕事です。ですので、図面だけを描くなんていうことなどありえない。なんでもこなせるような、こなすことに努力できるような人を求めています。専門家でありながら、より一般的な感覚をもって仕事をしなくてはいけない常識的な人。それが私の言う「バランス感覚のある人」です。
上記のあげた内容を見ると、私が設計の能力を人材採用で重視していないように感じるかもしれません。でも7私はこれらの用件を満たしていれば、設計は日々の努力である程度は養われていくと思っています。
でも設計で食べていこうとする人でそれがぜんぜんできない人ってあまりいないんですよね。今まで面接した人のなかではある程度のレベルまではいっています。おそらく今の人たちは早めに自分に見切りをつける人が多いのかなあという印象もそこから感じました。
ちなみに、「建築が好きな人」→「建築をつくることに熱意を注げる人」→「バランス感覚のある人」で条件が絞られていく流れにもなっていますので、上記の順番で見ていってみてはいかがでしょうか。
どんな面接にすると設計能力を見ることができるのか?
上記にあげた人材を、面接やポートフォリオを見て会話しただけでは能力やその人となりを判断することは難しいです。
そこで実際私たちが面接で行ったをご紹介します。
採用試験で設計課題をやってもらう!
どういうことをやるかというと、具体的には大学の授業課題のように、敷地を設定して(私の会社では竣工した物件の敷地をお施主様に承諾を得て使用させてもらいました)、そこに設計を行ってもらいました。お題は戸建住宅として、期間は1週間。A3用紙に提案内容を表現してもらって(表現方法は自由)、提出当日に口頭でプレゼンテーションをしてもらいます。
設計課題試験でわかってくること
この試験を行ってわかることが結構あるんです!ちょっとあげていきましょうか。
やる気がわかる
まずわかるのは、やる気や設計に自信があるかどうかがその試験を引き受けるかどうかでわかります。
設計能力(短い期間で設計をある程度まとめることができるか)がわかる
そして設計課題試験を受けることになったとして、1週間でどのくらいのものを提案できるかの設計能力がわかります。これは実際に設計実務として即戦力かどうかがわかりますね。
さらに表現を自由にしているので、その人の表現技術がわかります。模型をもってくる人、CGでパースをつくってくる人など様々です。
コミュニケーション能力がわかる
そして最後に口頭でのプレゼンテーションでは、設計した提案を第三者に伝える能力がわかります。
途中私たちが質問などをすることで、回答のしかたなどの対応でコミュニケーション能力もだいたいは把握できます。そして発表しているときの熱量で、建築が好きか、熱意があるかなども知ることができるというわけです。
いかがでしょうか?もし設計事務所や企業の方で面接内容を迷っている人がいたらためしてみてはどうでしょうか?なかなかいい面接内容ですよ!でもこの試験は逆に出題者や面接官の能力の問われる部分も多いのでしっかりと準備して行いましょうね!
採用後、設計能力の成長が見込まれる人の特徴
さて、私があげた人材、もちろん人間でありますので、入っていっしょに働き始めてその人となりがわかってくることも多いです。そのなかで、働いてからどんどん成長をする人というのがいます。その人のおもな特徴をあげましょう。
質問する人
設計実務の仕事をしていると、学生ではでてこなかった用語や現実、図面や書類の書き方などに直面します。そこですぐ上司や同僚の先輩をつかまえてしつこく質問する人は仕事の覚えも早いし、いっしょに仕事をしている側としてもまかせてみようかなという気になります。
素直な人
シンプルに他人の話を聞いて、それをまずやってみようとすることは成長を促します。よく、できないことに理由をつけて文句を言う人もいます。
まず話を受け入れてみる、これは以前ブログで施主との対話に関する部分で触れたと思います。仕事をいっしょにするうえでもそれは大切なことであるし、何よりもそうすることで吸収力が全然違います。私も働き始めは自分のやり方に意固地になっていた部分もあり伸び悩みましたが、素直に人のアドバイスを受け入れ、自分自身を客観的に見つめなおすことで軌道修正しながら成長していった経験がありますね!
模型をきれいに早くつくれる人
模型でできる建築はたいてい実現できるものである。なんて昔勤めていた設計事務所のボスに言われたことがあります。確かにそのとおりで、今までの実務に関する建築模型で技術的に実現できなかったものはありません。
少しお話がそれてしまいました。すみません。
とにかく模型は建築を確認するうえで重要な存在であると同時に、どう建築がつくられていくかシミュレーションできる存在であると思います。そして、それをきちんと段取りして早くきれいにつくれるようになることは、建築の設計実務にも影響してくるのです。
現場が好きで、現場監督であったり職人などから可愛がられる人
ここも重要なところですね!建築は施主だけでも設計者だけでもできるものではありません。作り手と一体となってつくりあげるものです。
施主が要望していることを設計者が受けて、それを施工する作り手に伝えることになります。彼らも人間です。いかに彼らに気持ちよく腕をふるってもらうかということも大事なのです。設計者は図面からだけでなく、現場においても能力が育てられます。それを好きになれるか、そして彼らに可愛がられてうまく育ててもらえるかは今後の成長に大きく影響してきます。
ここで私があげた4つのこと、これは本人が意識して努力すればできることではあるのです。こういう意識を心がけることで、あなたは着実に成長していけるはずです!
まとめ:設計をお願いされる人になろう!
いかがでしたでしょうか?上記のことはけっきょくは会社の人からすると設計の仕事を任せたい、客であればあなたに設計をお願いしたい。そういう人が求められているとだと思います。
建築は設計者と施主、施工者、職人との連携によって成り立ちます。この関係性がきちんと築けないといい建築はできないといっても過言ではありません。その一員として認められるには、設計の能力のほかに、対話能力や、人間性による部分がぜったいに必要になってきます。そういう仕事全体としての位置づけを考えたときにどう自分が建築の設計者として力になれるか、そこを考えて採用試験の面接や実際の仕事にのぞむことであなたは大きく成長し、立派な設計人になっていくはずです!
↓建築学生が設計分野に就職する際に必須なポートフォリオの作成についてのアドバイスをこちらで書いています。