建築設計の仕事をされている皆さん、このままその仕事を続けていくべきか、漠然とした不安を感じていませんか?

かつての私も、そして多くの同期や友人たちも同じように悩んでいました。設計事務所の仕事は受注状況によって収入が不安定になりがちです。安定を求めたり、より広い視点で建築に関わりたいと考えたりする中で、キャリアチェンジを決断する人は少なくありません。
この記事では、建築設計の経験を活かし、新しい道で活躍している人たちの事例をもとに、建築やものづくりに関わるさまざまな転職先をご紹介します。
1. 建築を「創る」現場へ
建築設計者としての視点を持ちながら、建物を直接「つくる」ことに軸足を移すキャリアです。
現場監督(ゼネコン・工務店)

特徴: 設計者から現場監督へ転職する人は少なくありません。実際に建物が建っていく様子をより身近に感じられる「つくり手」として、建築に関わることが自分に合っていると気づくケースが多いです。
転職の魅力: 設計に比べて仕事がコンスタントに入りやすく、収入が安定しやすい点が大きな理由の一つです。設計経験者は、現場で設計意図を正確に伝え、円滑にプロジェクトを進めることができます。
職人
特徴: 設計事務所から職人の道に進むのは、大きな決断と勇気が必要です。しかし、実際に手を動かしてものづくりをしたいという強い情熱を持つ人がこの道を選びます。
転職の魅力: 建築の最終的な品質を自分の技術で左右できる、深いやりがいがあります。若手職人が減少している中で、設計経験を持つ職人は現場でも重宝される存在となります。
2. 建築を「売る・広める」仕事
建築の企画や営業、情報発信を通じて、建築の価値を広く社会に伝える仕事です。
ハウスメーカー営業
特徴: 住宅のクライアントとのコミュニケーションを重視する仕事です。建築設計経験者は、その場で簡単なプランニングやコスト感覚を示せるため、大きな強みとなります。
転職の魅力: 建築設計の実務経験が直接的な営業ツールとなり、顧客からの信頼を得やすくなります。給与が基本給+歩合制の場合、成果次第で高収入も期待できます。
不動産業者
特徴: 建築と不動産は同じ建物という資産を扱いますが、互いの業界に距離感があることが課題とされてきました。この両者を結びつける存在として、建築設計経験者が活躍しています。
転職の魅力: 建築の専門知識を持つことで、顧客に対して建物の構造や可能性をより具体的に説明でき、安心感を提供できます。最終的に「人が豊かに生活すること」を目指すという点では、設計者と目的は同じです。
出版・編集者(建築雑誌など)
特徴: 建築をつくることよりも、見て、それを人に伝えることに情熱を持つ人が選ぶ道です。建築雑誌の編集者として、写真家や建築設計者と連携し、作品を世に送り出す役割を担います。
転職の魅力: 建築への深い知識と、文章を書く力や編集スキルを組み合わせることで、多くの人に建築の魅力を伝えることができます。
3. 建築を「管理・統括する」仕事
プロジェクト全体や行政を俯瞰し、より大きな視点で建築に関わる仕事です。
公務員(建築職)
特徴: 法律や制度に興味があり、より俯瞰的な視点で都市や建築に関わりたいと考える人が進む道です。
転職の魅力: 建築設計を知っているため、建築確認申請の審査や事前相談の対応がスムーズに進みます。また、給与や福利厚生が安定しており、長期的なキャリアを築きたい人に向いています。
建築プロデューサー・コーディネーター
特徴: 建築の企画をゼロから生み出すことに興味を持つ人が多いです。建築設計者としてプロジェクトに関わった経験が、クライアントからの信頼につながります。
転職の魅力: 家や医療福祉施設など、様々な建築の企画提案を行い、プロジェクト全体を管理・推進する仕事です。設計の実務経験が説得力となり、円滑なプロジェクト進行に貢献できます。
プロジェクトマネージャー(建築コンサルタント)
特徴: 建築設計・監理経験を活かし、発注者側に立ってプロジェクトをサポートする仕事です。
転職の魅力: 実務経験に裏打ちされたリアリティのあるアドバイスは、発注者にとって非常に価値が高く、プロジェクトを円滑に進めることができます。
4. 建築の「技術や知見を活かす」仕事
設計で培った知識やスキルを、形を変えて専門職として活かすキャリアです。
民間確認申請機関職員
特徴: 公務員や建築設計者としての経験を活かし、建築基準法に基づく確認申請業務を行う仕事です。中には、自身の経験を活かして独立し、事務所を立ち上げる人もいます。
転職の魅力: 設計実務と法規の両方を深く理解しているため、審査業務をスムーズに進めることができます。
資格予備校講師
特徴: 資格試験の勉強そのものに興味や情熱を見出した人が選ぶ道です。
転職の魅力: 建築設計実務経験を持つ講師は、受講生にとって大きな説得力となります。建築士試験合格を目指す学生や社会人をサポートするという、教育的なやりがいがあります。
CGクリエイター
特徴: 建築コンペやプレゼンテーションでCG表現が不可欠な時代になり、CG制作を専門とする人が増えています。
転職の魅力: 設計で培った空間認識能力や造形センスを活かし、より専門的なCG制作で活躍できます。中には独立して会社を立ち上げる人もいます。
建築設計から「デザイン」の世界へ
建築設計で培ったデザイン思考やディレクション能力を、より広い分野で活かす仕事です。
インテリア・リノベーション設計者
特徴: 新築よりも改修や再生に焦点を当てた仕事です。既存の建物をベースにするため、新築設計よりも短期間で多くのプロジェクトを経験できます。
転職の魅力: 案件数が多く、スピーディーに仕事をこなす実感を得られます。また、インテリアや内装デザインに特化したい人にも適しています。
デザイナー(プロダクト・ウェブ・グラフィック)
特徴: 建築のデザインから、家具、ウェブサイト、グラフィックなど、他のデザイン分野へキャリアを広げる選択肢です。
転職の魅力: 建築で学んだ空間構成やディレクション、ブランディングの考え方は、他のデザイン分野でも非常に高い汎用性を持ち、大きな強みとなります。
まとめ:建築設計の経験は、必ず次の道で活きる
一度、建築設計の道に進んでそこで終わり、という時代ではありません。
建築設計という考え方やプロセスは、どんな仕事でも必ず活きるものです。企画から始まり、多くの要素を考慮し、それを形にするという経験は、建築設計以外のあらゆる職種でも通用する強力なスキルとなります。
建築業界は常に変化しています。今回ご紹介した様々なキャリアパスは、あなたの経験が持つ可能性の広さを示しています。もし今、新しい道を考えているなら、その一歩を踏み出す勇気を持ってみてください。